109話 ページ36
＊
「次の相手、決まったな」
試合終了を告げる笛の音を聞きながら、澤村の声に一同は大きく頷く。
伊達工vs青城の試合、激戦の末勝利を収めたのは青城だった。
「良いものを見せてもらいましたねぇ」
立ち上がり体育館を出た烏野メンバーと共に歩き出した成宮はぼそりと呟き、今夜あたり来るであろう連絡を想像して苦笑いした。
隣の谷地がきょとんとしたのを見て、「なんでもないよ〜」と彼女のほっぺをぷにぷにつつく。
と、そんな時。
「およ？」
「…ちょっと良いか、クイーン」
腕を組みながら廊下の壁にとんっともたれかかっていた二口が、成宮を真っ直ぐに見て話しかけた。
聞き慣れない”クイーン”という単語に烏野メンバーは頭を傾げるも、ふぅと息を吐いた彼女はひらりと片手を上げた。
「ごめんみんな先にバス行ってて。にろ先輩、場所を変えましょうか」
ぺこりと仲間に一礼した成宮はスタスタと歩き出す。そして二口もまた黙って彼女の背中に付いて行ったのだった。
「…っとここら辺で大丈夫かな。先輩、とりあえず先ほどの試合お疲れ様でした」
人通りの少ない所まで歩いた成宮はくるりと向きを変え、二口に向き直る。
その労りの言葉を聞いて、悔しそうに二口も言葉を続けた。
「…ん、サンキュ。負けたけどな」
「の割にはまだまだ闘志に満ち溢れた顔してますね？さすがです」
先ほど谷地にしたようにぷにっと彼の頬をつつき、笑う成宮。
彼女の白く細い指をパシリと掴み、真剣な眼差しで二口は話し出した。
「俺さ…お前みたいになりたかったんだよ」
人間、他人と比べることがなければよっぽど楽なのではないかと内心考えながら、彼女は黙って彼の言葉の続きを待つ。
「本当のお前がどうとか正直まだよく知らねーけど、少なくとも俺が見た麻雀している時のお前は冷静で、自信に満ち溢れていて、運すら味方に付けて…格好良かった」
「お、おぉ。目の前でそんなに褒めて頂けるとさすがに照れますねぇ」
「あの時、お前は間違いなく上に立つ人間として生まれて来たんだろうなって思った。だから新キャプテンになって…お前みたいになりたかった」
「…ふーん」
「あーーーくっそ悔しいわ！青城の主将もお前みたいなタイプじゃん？はぁ…色々難しいのな」
「二口先輩」
頭をガシガシ掻きながら大きなため息を吐いた二口を見て、彼女は重い口をそっと開いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 633人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おもち。(プロフ) - ルイさん» 本当ですか！嬉しいです(^^♪最終章まで楽しませていただきます(*´`) (2020年4月17日 1時) (
レス) id: 753b9a62df (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - おもち。さん» わぁぁ！おもち。さん、とても嬉しいお言葉ありがとうございます！！最終章まで近いですが頑張ります♪（おもち。さんの素敵な小説も拝見させて頂いております(*´ω`*)） (2020年4月16日 21時) (レス) id: 94aec662ed (このIDを非表示/違反報告)
おもち。(プロフ) - 今まで読んできた小説の中で内容や設定1番好きかもしれません……！展開の魅せかたがめっちゃ好きです！！更新頑張ってください！ (2020年4月16日 16時) (レス) id: 753b9a62df (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - 佑奈さん» 佑奈さんありがとうございます！赤葦くんかっこいいですよね…！次の章からはまた登場予定なので楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです！ (2020年4月15日 1時) (レス) id: 94aec662ed (このIDを非表示/違反報告)
佑奈(プロフ) - このお話の赤葦くん好き… (2020年4月14日 15時) (レス) id: 174bbcca55 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ルイ | 作成日時：2016年7月4日 15時
