102話 ページ29
澤村の代わりにコートに入ろうとする縁下。
その表情を見て、一度目を閉じた成宮は次に目を開けた瞬間、誰よりも明るい笑顔で縁下を呼ぶ。
「縁ちゃん先輩!」
「え?Aちゃん?」
無意識のうちに強張っていた全身が、彼女の気の抜けた笑顔を見て緩まる縁下。
胸を撫で下ろした彼女もまた、彼の欲するであろう言葉を放つ。
「大地さんの代わりになろうなんて思わないで下さい。そんなの出来る人は、少なくとも今の烏野にいません!」
「え!?でも、」
「あははマヌケ面〜!…良いんですよ。縁ちゃん先輩は縁ちゃん先輩のまま、精一杯みんなを支えて下さい」
「俺の…まま…」
「はい!今の縁ちゃん先輩は大地さんよりスキルが劣ってるのは確かなんだから、そんなこと背負わなくて良いんですって!」
「今さらっとひどいこと言ったね!?事実だけども!」
そしてぶつぶつ言いながらも、どこか気持ちが楽になった様子の縁下が試合に参加した。
その一部始終を見ていた控えメンバーは、彼女らのその一瞬の会話で、縁下の気持ちが晴れたことを悟る。
「は〜やっぱ悔しいけどこういう時はAが一番頼りになるよなぁ」
「んふふそれはどうもですスガさん。そしてぐっち!君ももうすぐ出番よ?」
「え!?嘘!?」
「ほんと。ピンチサーバー」
「が、頑張る…俺、今回こそは…!」
こちらにも緊張が伝わってきそうなほど強張る山口。
世話が焼けると言いたげな彼女は、それでもどこか優しい顔をして山口の背中をぽんぽんとリズム良く叩いた。
「まぁまぁ。そう気張りなさんなぐちのすけくん!」
「誰!?」
「えへ、和んだ?」
「和むより前に驚いたよ!ツッコミも疲れたよ!」
「あっはは!なら良かった。ねぇぐっち…こういうのはさ、正解の道があるわけじゃないんだから。自分が選んだ道を正解にしていくんだよ」
「う、うん…そうだよね」
ぐっと拳を握った山口もメンバーチェンジで月島と入れ替わりにコートに入っていく。
成宮の言葉を心の中で、何度も何度も繰り返す。
「(俺にはジャンフロしかない。大丈夫、俺が選んだ道を正解にしていくんだ…!)」
だが、しかし。
「…あれま」
一本目のサーブ時、ネットインしたボールを見て山口本人は冷や汗をかく。
成宮は、彼の次の行動が読めてしまい口を尖らせた。
「やーまーぐーちー!」
鳥養コーチの怒りに満ちた声が響く。
彼は、逃げた。
二本目、普通のサーブに逃げたのだった。
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おもち。(プロフ) - ルイさん» 本当ですか!嬉しいです(^^♪最終章まで楽しませていただきます(*´`) (2020年4月17日 1時) (レス) id: 753b9a62df (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - おもち。さん» わぁぁ!おもち。さん、とても嬉しいお言葉ありがとうございます!!最終章まで近いですが頑張ります♪(おもち。さんの素敵な小説も拝見させて頂いております(*´ω`*)) (2020年4月16日 21時) (レス) id: 94aec662ed (このIDを非表示/違反報告)
おもち。(プロフ) - 今まで読んできた小説の中で内容や設定1番好きかもしれません……!展開の魅せかたがめっちゃ好きです!!更新頑張ってください! (2020年4月16日 16時) (レス) id: 753b9a62df (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - 佑奈さん» 佑奈さんありがとうございます!赤葦くんかっこいいですよね…!次の章からはまた登場予定なので楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです! (2020年4月15日 1時) (レス) id: 94aec662ed (このIDを非表示/違反報告)
佑奈(プロフ) - このお話の赤葦くん好き… (2020年4月14日 15時) (レス) id: 174bbcca55 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルイ | 作成日時:2016年7月4日 15時