【HQ】蝶は華と生きる。

バレンタイン番外編3 ページ25

4. 菅原

「はい、スガさんどうぞ〜」

「よっしゃAの手作り！ありがとな！」


彼女から受け取ったそれを嬉しそうに握りしめ、大きくガッツポーズした菅原。

想像以上に喜ぶ姿を見て、思わず成宮も柔らかく微笑む。

だが次の瞬間、彼女が両手に抱えている紙袋を見て菅原のその笑顔がピシッと固まった。


「え、聞くの怖いんだけどその紙袋は一体…」

「これです？片方は部のみんなに配る用で、もう片方は頂いた逆チョコです」

「逆チョコ！？まじでそういうのあるんだ！？」


あからさまに重量感のある袋をまじまじと見つめ、うーんと何かを考える菅原。

そして「ちょっと待ってて！」という言葉を残して走って何処かへ行ってしまった。


慌てて走りながら戻って来た菅原の手には様々な味のポッキーが抱えられていた。


「あ、スガさんお帰りなさーい。待ちくたびれて頂いたお菓子の半分食べちゃいましたよ？」

「はぁっ…悪い…つ、疲れた…」

「ほい、私のジュースでよければどうぞ〜」

「お、ありがとな！…はぁ〜生き返る」

「わぁスガさん、間接ちゅーですよ！」

「ぶふぉ！！ごほっ！！」

「え、なんかすみません」


思い切り噎せた菅原の背中をさすりながら、言葉の割には楽しそうに彼女は笑う。

菅原はそんな彼女を真っ赤な顔できっと睨みながら、持っていたお菓子をずいっと差し出した。


「ん！こんな安物で格好つかないけど！」

「はい？くれるんです？お返しならホワイトデーでいいのに…」

「〜ッじゃなくて！お返しは別でするけど、これは逆チョコ！」

「あー逆チョコ…え、逆チョコ？義理チョコでなく？マジもんの？」

「大マジもんの」

「それはそれは…あ、ありがとうございます」


勢い余って菅原が渡しながらぎゅっと手を握るもんだから、それが本命だと分かった成宮は顔に熱が集まるのを嫌でも分かってしまった。

その顔を見て、満足気な菅原は先ほどまで食べていた彼女の口元のチョコレートを指ですっと掬い上げる。


「ふはっAってやっぱ時々すんごい可愛いべ！」

「ば、馬鹿にしないで下さい！ていうか付いてたなら口で言って下さいよ… 」

「やだ。俺が食べたいもん」


そう言って、ペロリと自身の指のチョコを舐めた菅原の姿があまりにも色っぽくて。

目を見開いた彼女が、菅原の鳩尾に小さくパンチを入れて叫び逃走する姿が、澤村に目撃されていたそうな。


「スガさんのむっつり野郎〜〜！！」

「でかい声で叫ぶな！！！」


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