花と藍

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橘side
＿＿手術室


三井「うまくいってよかった」

橘「うん」


確かに、色々あったが結果的にさっきの手術が無事に終わったことは良かった。だがわかる。目の前の彼女はそう言うことを言いたいんじゃない、と。

三井「今日はやけに静かね。…言ってよ、もう慣れたから」

橘「さっき、井上から連絡があった。適合しなかった」

三井「そう…」

橘「まぁ、気長にやろう」

三井「そんな時間はないけど…ごめんなさい」


あの三井環奈が、こんなにも弱っている。優輔だって、表面上は取り繕えても心の奥ではそろそろ限界を迎えるだろう。


橘「こっちに転院できたんだ。これからはもっと、あいつのそばにいられる」

三井「そうね…」

橘「俺もさ、あいつの起きてる顔が見れて嬉しいよ」


だから俺は笑顔で支えなきゃあいけない。
優輔の、環奈の幸せの為に。






白石side
＿＿エレベーター


またエレベーターで藍沢先生と乗り合わせたので、さっきのお礼を言ってみる。


白石「ありがとう、助かった」

藍沢「フェローはみんなあんな感じなのか？あれなら、そこそこ経験を積んだナースの方が使えるな。医者はプライドがある分面倒だ」


確かに藍沢先生の言う通り。だけど他に翔北にはフライトドクターはいないし、一人前じゃなくてもフェローがいなくなる方が更に困るはずだ。多分。


白石「でも育てなきゃ。救命を回していくのは今の彼らを育てるしかないから」

藍沢「育つ前に患者が死ぬな」

白石「え？」


思わず耳を疑った。確かに今日のことで私もそう感じた。だけど、そんな風に言うなら…


藍沢「悪い、部外者が余計な事言った」

白石「戻って来れない？…ごめん、こっちも余計なこと言った。藍沢先生が脳外で頼られているのは知ってるし、西条先生だって手放さないよ。今のは嘘、忘れて」


正確には嘘じゃないけど。
思わず考えなしに口走ってしまった。でも、あの現場を見たなら、もしかしたら…


藍沢「トロント大からレジデントの話がきてるんだ」

白石「そうなんだ」

藍沢「…すまない」


トロント大学のレジデント。それがどれだけすごいことか、私でもわかる。彼は本当に実力ある人だから、きっと世界に渡って活躍するべきなんだと思う。
だから、それなら仕方ないって普段なら思うだろうけど、私達も本当にギリギリの状態だ。

せめて救命にあの子がいたら、少しは変わっていたのだろうか。


白石「…A。戻ってきてよ、藍沢先生と一緒に。」

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