誘惑会。shori.s

temptation meeting .32 ページ32

勝利side.





4人が生徒会室から出て行って、
残ったのは僕と君だけだ。

言い過ぎたことを謝ろうと君に近づいた。









A 「ごめんなさい。」


君が絞り出すような声で謝った。
うつむいたままで、君は言う。


A 「でも、ここじゃないの。この学校じゃなかったの。」


君の落ちた青蘭高校のことだろう。


A 「何かで1番にならないと胸のどこかがおかしくなるの。」




顔を上げた君。
驚いた俺は動けなくなる。

だって君がいつも笑っていた君が
時々怒っていた君が

泣いていたからだ。









・









勝利 「ごめん。」


気づけば抱きしめていた。
「なんで抱きしめてるんだ？」と自問自答。








勝利 「言い過ぎた。本当にごめん。」


勝利 「3年前、恋愛が原因である生徒が自ら命を絶とうとしたんだ。だから、この学校は恋愛禁止にきびしくなったんだ。」




ほら、と君の背中をポンと叩く。









勝利 「泣かないで。」



君からゆっくり手を放す。
君の体がゆっくり離れる。









・









勝利 「泣くと不細工な顔がさらに不細工になるよ。」



抱きしめたことに混乱して
いつものように出てしまった嫌み。

今の君には言ってはいけなかったと、謝ろうと君を見れば。









・









A 「そうだね。これ以上、変な顔になるのは嫌だもん。」


君が俺の嫌みを初めて無邪気にかわした。

ふわふわ、と微かに赤い目をして君が笑った。









この時だろうか。

ギャップ萌えの意味を知った。








勝利 「なんだ、やっと自覚した？」


君の涙を見たのは俺だけ。
あの健人くんだって見てない。


ねぇ、A
君の涙は、涙だけは俺のものにしていいですか？









A 「乗ってあげただけ！調子に乗らないでよ。」

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