水槽 ページ8
『おぉ…!』
想像以上に大きな内装に圧倒され、変な声が出る。
ほぼガラス張りな店内、
散りばめられた水槽
汚れ一つない白色の柱
俺を魅了するのに、そう時間はかからなかった。
「多分こっちだよー」
「一階の電子屋何故かスマホ変えなかったんでこっちいきましょう」
伊藤さんが両腕を左右に大きくふり、その隣にいるぐち逸さんが片手を軽くふって教えてくれた。
地下に続く階段の柱は水槽なんだな
冷たいガラスを触ってみると、かすかに水の中の海藻が揺れた。
一時的にその青い世界にとらわれる。
こんなにも透き通った世界を泳げたら…
「Aさん?」
『あっ』
つい見とれて二人をまたせてしまった。
こんなにも子供みたいに水槽に興味津々だったのを見られたのがどうしようもなく恥ずかしい。
自分だけ顔が熱くなっている気がして、ちょっぴり嫌だった。
『ご、ごめんなさい…
いきましょう、か。』
赤い顔を見られないように顔をマフラーで隠し、二人よりも先に階段を降りた。
顔を手のひらでパタパタとあおぎ、熱を冷ましてみる。
でも頭に残るこの恥ずかしさはなかなか消えてくれないから
後ろからちょっと笑う声がする
『こら!笑うな!気にしてんだぞ!…です』
「すみませんw」
ぐち逸さんが笑ってたんだ
意外かもしれない
でも拗ねる。
こいつだけおいていってやろうかとも思ったが、
ぺいんさんはもう見る間もなく先に行っていたのを見てやめた。
またはいぱーなんたらを使ったのか…??
そうではないらしく、かなり後ろにいる俺達を見て驚いていた。
「二人共早くー!」
『今行きます!
ほら、ぐち逸さんも笑ってないで!』
「はいはい。」
『“はい”は一回ですよ〜』
彼の耳が赤かったのは、きっとこの寒さだから。
そう、思った。
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