約束 ページ7
「よし、じゃあ買いに行こっか!」
伊藤さんが車を降りる。
ぐち逸さんも降りたので、二人に遅れて俺もドアを開けた。
白くて大きい建物。黒いガラスからうっすら見える内装はとても美しかった。
二人が歩くのが速すぎて小走りで追いつくのが精一杯。
ぐち逸さんは俺よりも背が高いからいいとして、
伊藤さんより俺のほうが若干背が高いはずなのに…
やっぱ警察だから?
訓練とかしてんのかな…
「ちょっとまってぐちいt
ぐち逸さんと並んで歩いていた伊藤さんが背中の銃を残して消える。
目をパチクリさせ、袖で目をこすって開けても伊藤さんは帰ってこない。
体が震える。
冷静な判断ができず、目の前の人が突然消えたことに波のような恐怖が押し寄せていた。
手を口にあて、荒い呼吸を必死に抑える。
どうして
なんで
その言葉がループ再生のように脳みそにながれこんだ。
そんな中
「大丈夫ですよ。伊藤さんは変わった人でしたし、きっと驚かせようとしてるんじゃないっすかね?」
ぐち逸さんが俺の背中をリズムよく、優しく叩いてくれる。
安心感がえげつなくて、こぼれそうになっていた涙が、ぐち逸さんの袖に染み込んだ。
「あ、目拭かれるの嫌でした…?」
『いや、いいんです。むしろ汚れて嫌じゃないですか?大丈夫ですか、?』
「そんなん気にしなくていいっすよ。
同じ事情持ち同士、仲良くしましょうね」
彼の眼鏡の奥がゆっくり細められる。
優しいその性格と笑顔が、とても似合っていた。
その優しさに俺はまたしても惹かれてしまう気がする。
耳赤いのバレてないかな
伊藤さんがいなくなったのはポジティブに考えることにした。
どこに行ったんだろう、伊藤さん
まさかこれも警察の能力…!?
瞬間移動?それとも透明化?
『まさか伊藤さんは宇宙人…!?』
「俺はどうしたらその発想にたどり着くのかが気になりますね」
先程よりも大きな、はじけた笑顔を見せるぐち逸さん。
心臓に悪いなぁ…
「ごっめーん!!!
ちょっとハイパーキネティックポジションリバーサーしてたわ!」
黄色い仮面の伊藤さんが走ってきて、そう言った。
『ちょっと伊藤さん!!ほんっとに心配したんですからね?
あと…はいぱー…?』
「これ覚えなくていいやつだと思います。」
そうなのか…?
はいぱーなんたらみたいな呪文はまた今度聞いてみようかな
記憶の中に、自分の中での約束が居座った。
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