おはなつみ ページ2
「…名前を、覚えていないと。」
『ご、ごめんなさい!ほんとに、なにも覚えてなくって…』
首を上下に動かそうとするも、やっぱり動かない。
だからせめて、心のなかで精一杯の謝罪をした。
『…それとここ、どこですか?』
そう言うと、鈍い反応がかえってきた
「あー…ここは“花摘み場”かな。」
『お花摘み…』
俺はそんなにファンタジー人間だったんだろうか
妖精とか信じちゃうタイプ?
『…w』
「どうしました?」
『いやぁ、記憶を失う前の自分が、お花を摘むような可愛らしい人だったとは、』
笑いをこらえると
言いづらそうに鳥野さんが口を開く。
「…あぁ、
花摘みっていうのは、その…ドラッグの原料の花でして
違法なんですよ」
『…』
突然虚無に突き落とされる。
俺はそんなに極悪人だったんだろうか
「記憶、取り戻せるといいですね」
ヘリが病院らしいところの前で着陸する。
俺を持って中に入ると
手術室のような、ベットが並ぶ部屋に入れられた。
真っ白な一つのベットに寝かされると、何かしら医療の道具なのだろうか それを手にして俺の怪我の手当てを始めた。
「痛すぎたら言ってください」
『…はぃ』
心臓マッサージ的なやつが終わると
俺は無意識に立つことができていた。
こんなに動けるなんて…さっきが嘘みたいだ。
「しばらくは激しい運動もできないけど
治ったときには、どれだけでもはしゃいじゃっていいですよ」
『そんな無邪気じゃないですよ…』
鳥野さんに入口まで送ってもらう。
途中でいろいろな人が俺の横を通り過ぎたり、個性的な人が意味のわからない動きをしていたりなど
ほんとにここ医療か?と疑ってしまうほどだった。
「ん…?あ、ごめんなさい
また直しにいかないといけない人ができたみたいで」
「これホントに直しに行っていいのか…?」
何故か困っているようだったので、背中を押すように声をかける。
『失われかけている命は、どんな人であろうと助けるべきです。』
『もしかしたら悪い印象のあるところにいるだけで別に何もしてない人だっていますから』
そう言うと、少し悩んでから
うん、と頷いてくれた。
「…そこまで言うなら。
警察も向かってないみたいだし」
『じゃあ俺はここでまってますよ』
「わかった。」
真っ赤なヘリに乗って飛び立っていってしまった鳥野さん。
その時俺は、ただ純粋に
ケガしている人が無事でありますようにと願っていた。
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