先生だって生徒だって恋に溺れる【歌い手合作】 (ページ5)

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srr : 保健室のせんせ。… from 夕焼ページ5

ここは保健室。保健室独特の、消毒液や包帯の匂いがして、落ち着いた雰囲気だ。

私、保健室の先生のAは、その雰囲気に浸り、自分の席に座って、誰も居ない、ゆったりとした時間を過ごしていた。

あの生徒(問題児)が来るまでは。

「せんせ～会いに来たよ～」

『彼方君、正当な理由無く来ないでね～。後、ノックをしてから入りましょうね～』

「分かった。」

今日は素直に返事をした生徒は律儀に、もう一回保健室を出て、コンコンと扉をノックをした。私は溜め息を吐く。優しさの塊で"どうぞ"と返事をしてあげた。

ガラガラと音がして、扉が開く。その生徒は生真面目な顔をしつつ、眠そうな声で、またもや問題発言を繰り返す。

「失礼します。三年B組の一ノ瀬彼方です。A先生に会いに来ました。」

『んん～？話聞いてたかなぁ～？』

私の発言を他所に、生徒_一ノ瀬彼方君は、保健室の扉をちゃんと閉め、ずんずんと保健室に入ってきた。変な所できちりとしているの、何とかならないだろうか。

私の席の前にちょこんと、可愛らしく座った彼方君。私はもう一度溜め息を吐く。

『あのねぇ、先生を慕ってくれるのはとっても嬉しいんだけど、正当な理由無く保健室に来ちゃ駄目。これ言ったの何回目？』

「いっぱい先生に会いに来たから分かんない。ていうか、分かる訳無いのに聞くのも、どうかと思うけど。」

『それはそうだけどさ… 』

「それに先生、保健室以外じゃ、ほとんど会えないじゃん。教科担当してる先生じゃないのに。何、放課後デートにでも誘えば良いの？」

『それはもっと駄目！』

屁理屈っぽいけど、正論な彼方君の返答に、溜め息を吐くばかり。私はちらりと彼方君を見る。

何時ものふわふわとした紺色の天然パーマの髪の毛に、ちょっと深めの、海みたいな青色の目。はんぺんみたく色白で、顔も整っている。

何故こんな子に、私が慕われているのだろうか。もっと可愛い先生とかいるし、別に私じゃなくても良いと思うんだけれど。それこそ、保健室の先生に媚び売ったって、何も出ないし。

私は何時もの疑問を持ちつつも、目の前に居る彼方君に言う。

『はぁ…じゃあ私に会いに来たのなら、もう良いでしょ。帰ってね。』

「 …あ、そうだ。」

『ん？』

「もう一個だけ、先生に用事があるんだった。」

『何？もうすぐ、私此処出るし、長くなるなら駄目だからね。』

「大丈夫、すぐ終わるよ。」

彼方君はにこにこ笑った。