97.手 ページ1
俺は呼吸を整える。
顎を引き、相手の目をしっかりと見る。
刀に集中を向け、気を練る。
「君、面白いネ」
相討ちでもいい。
Aを守る。Aを鬼になんてさせねぇ。
一瞬だった。
俺の刀は夜兎のヤローの肩を貫いた
そして、夜兎のヤローの拳が俺のみぞおちにクリティカルヒット。
『ウグァッッッ』
背中に激痛が走る
口の中に血の味が広がる。
ぼんやりと見えるチャイナ服の男の姿
「よし、邪魔者はもう居ないネ」
とAに向かって注射針を向ける
あぁ。Aすまねぇ。守りきれなかった…。
「グアッ」
と呻き声が聞こえる。
「総悟くん…!総悟くん!!」
と俺の大好きな声が聞こえる。
『…いよいよ俺もヤキがまわっちまいやしたねィ。Aの声が聞こえらァ。』
目の前にぼんやりと見えるAの顔を手を伸ばす
微かに指先が濡れるを感じた。
「A…すごい生存本能だネ。打つ瞬間に目覚めてボクに回し蹴りするなんて、ますます気に入ったヨ。」
と足音が聞こえる
そして、金属音が聴こえる。
「もう…大切な人は失いたくないの…」
聞こえるか聞こえないかほどの細い声でAは言った。
ドゴォォォンンンと言う轟音が響く
「ウッッッッ」
Aの呻き声が聴こえる。戦況が分からない。
背中に激痛が走っている上、頭を強く打ったせいで意識が朦朧としている。
「総悟ッッッ!A!大丈夫か?」
と土方の声と共にゾロゾロと足音が聞こえる。
救援か…
すると
「団長ォ、ここは手ェ引いた方がいい」
「阿伏兎…。邪魔しないでよ、楽しんでるのに。でも、厄介なのが来たネ。帰ろう。」
とひとつの足音が遠くに向かう
「総悟…くん…」
と俺の手にAの手が乗る
その手を俺はそっと握り返した。
31人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:トマトマト | 作成日時:2021年12月5日 15時