もしもの話【角名倫太郎】 (ページ29)

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君がページ29

日が少し暮れかかった頃、街の中に生えている枯木がライトアップし始めそれをを少し眺めながら2人で歩いていた。

こうふと見ると彼女はこの中にいるどの通行人よりもキラキラとしたオーラを纏っているように可愛い。通り掛かる時に好意的な目線で彼女を見てくる男がかなり気にかかるくらいだ。

「A」

『ん、どうしたん？』

自身の名前を呼ぶ声に反応したAはこちらへと視線を向けてきた。

「こっち」

そう言って少し強引に手を引っ張りながら彼女を連れた。

案の定彼女はあたふたとしているが気にせず連れた。

そうして大きなもみの木でライトアップされているその場所で止まり、向き合った。

「A、よく聞いて。」

なんでこんなことしたんだろう、いつもこんなことしないはず。彼女の前だからか？
俺は自分の突然の行動に少し驚き、今になって冷静になったのだ。

いや、俺はデートの序盤から彼女を見る男どもをずっと目にしてきた。なのに露知らず普通の顔をしている彼女にどうもイラついてしまったのだろう。

すき

彼女の手を半ば強引に引っ張っておいてたった2文字のこの言葉が出てこない。今すぐ伝えたい、俺のものにしたいって思ったはずなのに。どうも決定打が踏み込めない。

いやいや今日は元々この想いを伝える予定はしていなかったのだ。抑えろ、俺。まずやるべきことがあっただろ。

「ちょっと早いけど誕生日おめでとう。」

そう言って綺麗に梱包された正四角形の箱を取り出した。

『え、ほんまに？ええの？』

恐る恐る受け取る彼女に俺はにこっとしながらうんと返した。

『開けてもええ？』

そういう彼女にどうぞと言って俺は少し照れ隠しから頭をかいた。

『え、可愛ええ！！なにこれ倫太郎くん選んだん？』

そう言ってキャッキャッと騒ぐ彼女が持つのは俺が選んだリボンシュシュ。

渡辺さん、ヒント教えて貰ったけど結局違うのにしたよ。

俺が彼女にあげるものにいくら友達と言えど他の人が干渉したものは嫌だね、なんて独身欲を抱いてみた。