「俺からの宿題」(T.F) ページ8
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「A、教科書貸してくれへん？」
毎週火曜日のお昼休み。
教室の入り口から覗き込む彼の元へ教科書を持っていくのは、もう何度目だろうか。
『はい、数学ね』
「ありがと。昨日勉強してそのまま机に置きっぱやわー」
あー焦った、なんて少しもそんな様子を見せずに笑っている彼。
その顔をじっと見ていると彼も不思議そうに見つめ返してきて、思わず逸らしてしまった。
「え、なんでこっち見いひんの？」
『や、えと、』
無理やり目を合わせようと覗き込んでくる彼。
縮まる距離に心音が速くなっていく。
気が付けば、私の背中は壁にくっついていた。
『うぅ……大晴くん、ちかい……』
「Aが避けるからやん」
『だ、だって……』
かっこよかったんだもん
周りのざわめきにかき消されそうなぐらいの弱々しい声が漏れ出す。
彼に届かなければいい。まだ気持ちを伝えるだけの勇気を私は持ち合わせていない。
恐る恐る顔を上げて、また小さく声が零れた。
だって
「っ、」
大晴くんの顔が、真っ赤だったから。
『たいせ、くん？』
「っ、ちょ、今見るん禁止！」
彼の大きな手のひらで視界を塞がれる。
伝わってくる熱と脈拍が私にも移り、お互いの緊張とドキドキが混ざり合っていく。
白い肌のせいで余計に火照りが目立っているのが、僅かな指の隙間からでも覗き見れた。
「もぉ急になんなんほんまに……」
ずるい、とか。あほ、とか。
彼にしては子どもっぽい語彙がぽんぽんと繰り出される。
『……大晴くんも、照れたりするんだね』
ぴくっ、と指が動いたのがわかる。
深いため息を吐きようやく離れた彼は、何とも言えない微妙な表情をしていた。
「そりゃあ好きな子にあんなん言われたら嬉しいやろ」
『……へ、？』
「毎週話すきっかけ作ってんのになんで気付かへんの」
甘さが滲む拗ねた口調に心臓がきゅうってなる。
そんな風に言われたら、都合よく考えちゃうよ。
口を開こうとして、予鈴のチャイムが校内に響き渡り私たちの邪魔をした。
私だけじゃなくて彼も残念がってるのが雰囲気で伝わる。
「俺からの宿題」
『え？』
「帰りまでにさ、いっぱい俺のことだけ考えてや」
ちゃんと
そういつもより蕩けた柔らかい笑顔に、私はまんまと彼のことしか想えないのだった。
「もうわかったって」(S.S)→←「じゃあ俺と付き合う？」(M.S)
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ゆの(プロフ) - ゆきまろさん» こちらの方までありがとうございます！ 佐野担さんに喜んでもらえたなら大満足です！！ (2022年10月26日 10時) (
レス) id: a2597d3538 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきまろ(プロフ) - 佐野担の私は無事に死亡しました、、、これ何回も読みます、、！ (2022年10月25日 23時) (レス) id: fd73da006f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆの | 作成日時：2022年10月25日 4時
