やっぱり手強い彼 (ページ7)

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57話ページ7

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中「A」

『……やだ』

中「俺向こうで黄色チームの話し合いせなかんから」

『私もいく』

中「自分の考えなかんやろ？」

『どーせ1人だもん』

困ったように笑う淳太くんがどこかへ行かないよう、腕にしがみつく。
他のメンバーは既に各々分かれてて、あとは私と淳太くんだけ。

別に誰でもよかった。でも今は1人になりたくない。
だって話しかけられたくない、から。

中「Aがどんなんやるか、俺も楽しみやねんから」

頭を軽く撫でてくれた淳太くんはいつも通りのお兄ちゃん。
そんなこと言われたらこれ以上引き止めることなんてできなかった。

中「ほんなら後でな」

『ん』

中「皆ここにおんねんから大丈夫」

『はぁい……』

集まりに加わる淳太くんの後ろ姿を見送り、私は部屋の隅っこに体育座りで縮こまった。
サボりじゃないよ。ちゃんとイヤホンで音楽聴きながら考えてるもん。

“なにわの日”に関西メンバーで集まるってなったときに、一番最初に思い浮かんだのは彼のことだった。

会いたいけど会いたくなくて、話したいけど話したくなくて。
どうしたらいいのかわからず、あの日を思い出すたびに涙が零れた。

『……せーやくん』

弱々しく響く彼の名前。
聞こえるはずなんかない。届いてほしいわけじゃない。

それなのに振り返った彼の視線は一直線に私と交わった。

『っ、』

顔を伏せて、視界が真っ暗闇に染まる。

久しぶりに彼を見た。

私が、ずっと避けてたから。

……ねぇ誠也くん。なんであの時キスしたの？

聞きたくてしょうがないのに、音にならずに溶けていく。