やっぱり手強い彼 (ページ49)

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99話ページ49

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いつになく真剣な表情。
そんなの向けられたことがなくて思わず視線を足下に下げると、咎めるように手首を掴む彼の大きな手のひらに力が込められた。

心臓が痛いぐらい音を立てているけど、ただのドキドキとは少し違う。
私の頭は“どうしよう”と不安を繰り返している。

『……忘れよ。どっちも悪くないし、事故だもん。今まで通りに、』

小島「あかん」

『え、？』

小島「無理やろ普通に。こっちだって捨てれるもんなら捨てたかったわ、こんな感情」

『なに』

言い切る前に強く引っ張られ、腕の中に閉じ込められる。何が何だかわからない。首筋には彼の髪の毛が触れて、耳にあたる息が熱い。

小島「好きや」

そう言って息が詰まりそうなぐらい腕の力が強まる。
速い鼓動は彼の緊張を表していた。

こんな姿を見るのは、始めて。

小島「誠也くんのやってわかってる。Aの気持ちも知ってる。けどもう無理やねん。見るたび可愛いって思うし、ちょっかいかけたくなるし……なんなんくっそ……」

縋るように抱きしめてくる彼。
押しのければ、今すぐ離れれば。
それができないのは私にとって彼も大切な人だから。

小島「今だけでええから誠也くんより俺のこと考えて。俺のこと、男として見て」

切実な願いはたぶんずっと言えていなかったこと。
私に、秘密にしていたこと。

……そんな予感を、ちょっとも感じなかったわけじゃない。
懐かれているだけ、身近に私しか女がいないだけ。きっと気のせい。自意識過剰。

揺らぐことはない。私の想いは昔から変わらないから。
私の好きな人は、ずっと誠也くんだけ。

だけど私の手は無意識にスマホの画面を閉じていたのだった。