94話 ページ44
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「そーゆう可愛いこと、他の奴にやったらあかんからな？」
『誠也くんなんでも可愛いって言う』
照れくさそうにはにかむとこもかわいい、とか言うたらええ加減怒られそうやから胸に秘めておく。
けどほんまになんやろ。ガチで全部可愛い。
こんなに溺愛することになるなんて、昔の俺が見たらびっくりするやろな。
Aとおると、知らんかった自分に気付く。
「あー、ちゅーしたなってきた」
『へ』
頬をひと撫でするだけでぴくんっ、と身体を跳ねさせた。そんな反応されたら調子乗るやんって思いながらも、親指で唇をふにふに触って擬似的に堪能する。
はよしたい。ほんま
欲望と煩悩が頭を占める。
『リ、リップとれちゃうから』
「んー？」
『も、やだ』
ぐーっ、て俺から離れようと身体を押すけど残念なことに大して動かない。力弱すぎやろ。かわい。
「なにが嫌なん？」
『リップとれちゃうってば、』
「どーせちゅーしたらとれるやん」
『〜っ、ここではしない！』
真っ赤っか。俺の色。
こんな可愛い子の可愛いところを俺しか知らへんの、ほんま気分ええ。
一生誰にも渡すつもりないけど。
はいはい、ってちっちゃい子をあやすみたいに頭を撫でると、それはそれで嬉しいのか悔しそうな顔をして俺の手を受け入れる。
『……今日、
「Aが嫌ならやめとこかなぁ」
『その言い方ずるい……きて』
聞こえるか聞こえへんかぐらいの可愛いらしいおねだりに俺はもうでれでれ。
好き。めっちゃ好き。
もっとAが欲しくなる。
日に日に強まっていくその気持ちをぶつけるにはまだ早すぎるってわかってんねんけど、どっかで我慢できひんくなりそう。
「やっぱ今ちゅーせえへん？」
『ばっ、ばか！！』
俺から逃げ出して勢いよく混ざりに行ったせいで、小島と正門から不審そう目で見られる、挙動不審な彼女。
それがおかしくて笑いそうになるのを堪えながら、親指に残った赤に愛おしさを募らせるのだった。
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作者名：ゆの | 作成日時：2023年1月28日 4時
