やっぱり手強い彼 (ページ39)

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89話ページ39

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『誠也くんってさぁ』

末「んー？」

『結構独占欲強い、よね』

眉間に皺を寄せ、心底呆れた顔で「なんやそれ」と言った彼が、私の太腿に頭をぽすんとのせてくる。

可愛い。甘えてくれてる。
人肌が好きなのか、気付けばくっつき虫になってる彼が今日も愛しい。

オフでセットされていない髪の毛を整えるように撫でると、さっきまでと違って気持ち良さそうに目を細めた。

『ふふ、猫みたい』

末「にゃあ、って言えばええん？」

『えぇなにそれかわいい』

末「ちゃんと可愛がってな」

『誠心誠意お世話します』

誠也くんが本当に猫だったらきっとこだわりが強くて大変かも。
ご飯もブラッシングもおもちゃですらお気に入りじゃないと文句言いそうだし、構いすぎたらそっぽ向きそうだし、放置したら怒りそう。

でも可愛いから結局溺愛しちゃうんだろうなぁ、なんて。

末「Aがさぁ、可愛すぎんのがあかんやろ」

『え？』

末「俺だけ見ててほしいし俺にだけ可愛い顔見せてほしいのに、すぐ他の奴らも構うんやもん」

妬くわ普通に、って。

遅れて返ってきた質問への答えはとんでもなく甘ったるいもので、みるみるうちにだらしない顔になってしまう。

『えへへへへ』

末「ちゅーわけで俺とおる時は他の奴のこと考えんの禁止やから。せめてもの譲歩やねんで」

誠也くんにならどれだけ束縛されたって嫌じゃない。
むしろ愛されてる証拠だって思えちゃう。

末「わかった？」

『はぁーい』

末「ほんならちゅーして」

『ぅ、え？』

末「約束のちゅー」

ん、って目を閉じた彼に動揺の色を隠せない。
きっといつもなら恥ずかしすぎて無理になっちゃって、結局彼にしてもらってる。

でも今日は、ほんのちょっぴり勇気をだして。

髪の毛を耳にかけ、彼の顔に近付いていく。

心臓うるさい。誠也くんに聞こえちゃう。

震える唇を、彼にそっとくっつけた。

末「え」

『……やればできるもん』

末「って、泣きそうになってるやん」

『……しにそう。寿命縮んだ』

末「ん。頑張ってくれてありがと」

よしよしって伸ばされた手のひらが私の頭を優しく撫でつける。
嬉しそうに微笑む彼に、やっぱり好きだなぁって改めて思うことができた。