やっぱり手強い彼 (ページ13)

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63話ページ13

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『すっぴん見て、引かない？』

一向に戻ってくる様子のない彼女は洗面所にかくれんぼ状態。
かろうじてひょっこりしてくれているが、その顔は両手で覆われている。

「前に番組で見たし、俺可愛いって言ったよな？」

『や、だってあれは収録だしお世辞込みじゃん』

「そんな嘘つかんわ。笑」

『う、でも……ほんといつもより可愛くないし』

何を言ってもうだうだと返してくる彼女に面倒やなんて気持ちはまったく湧いてこない。
それどころか、俺に可愛いって思われたいだけでもう既に可愛い。いつも可愛いのに数割り増しで可愛い。

「えぇからはよ顔見せて」

『わっ、』

強行突破、ってことで手首を掴んで無理やり引っ張り出す。

ほっそい手首も、俺よりちっちゃい背も、女の子らしい甘い香りも、ほんのり赤く染まった顔も。

あー、全部可愛い。なんで今まで我慢できたんやろ、俺。

「恥ずかしいん？」

『わかってて聞くのずるい……』

「しゃーないわ。甘やかしたい気持ちと意地悪したい気持ちが半々なんやもん」

好きな子はいじめたくなるタイプやったんやなぁ、って呟くとさらに彼女の顔は熱を帯びていく。
あんまやり過ぎたらあかんってわかってるんやけど、調子乗りそうになるやん。

「照れてんの、かわい」

『……それやだ』

「なにが？」

『声、甘くて……心臓いたい……』

掴まれてない方の手を胸の前でぎゅっとする彼女は、狙ってやってへんのやろうけどやっぱりいちいち俺のツボやねんな。

意地悪したい気持ちの割合が大きくなんのは、自分のせいでもあるって気付いた方がええわ。

「A」

とびきり甘く、息を吹き込むように耳元で囁くと、勢いよく遠ざかって耳を手で押さながら口をぱくぱくとさせている彼女と目が合う。

『〜っ、誠也くんのばか！！』

やったわ。

そう思いながらも俺の口角はまるで下がる気配を見せず、ベッドに逃げた彼女を見てさらに緩んでいくのだった。