61話 ページ11
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『わたしが好きって言ったら、好きって返してくれる？』
末「Aが言わんでも俺から言う」
『理由がなくても触っていい？』
末「俺だけならええよ。他のやつはあかんけど」
『あと、えっと……』
必死になって質問を重ねる私の耳に、くすくすと彼の楽しそうな笑い声が届く。
ひどい、という思いを込めて恨めしげに少し睨むけど彼には一切効果がないみたい。
『誠也くん、ばかにしてるでしょ』
末「ちゃうよ。かわええなぁって思っただけ」
『……う』
末「あ、嬉しいんや？」
簡単に押し黙った私を見て、彼はまた声を出して笑いながら覗き込んできた。
好きな人に「可愛い」って言われて照れない人なんていないって事実に、いい加減気付いてほしい。
末「ほんまに可愛い。好きやで。Aが好き」
『そ、そんなに言わなくていい！！』
末「あかんって。今までの分も言わせてや」
そう言って何回も耳に吹き込まれるのはずっと聞きたかった愛の言葉。
それは思っていたよりも甘美で、重くて、苦しくて。
毒みたいに身体中を巡って、私の胸に降り積もっていく。
耐えきれずに溢れた想いは涙に変わろうとしていた。
末「もぉー泣かんといて、な？」
『いっぱいいっぱいなんだもん……』
末「いつまで経ってもできひんやん」
『ふ、ぇ？』
末「これもやり直しさせて」
気付けば彼の綺麗な顔が目の前まで迫ってて。
鼻先がくっつきそうな距離に引けた腰は、簡単に彼の腕に戻されてしまって。
思わず目を瞑ると、「すき」と囁いた唇が重ねられる。
それはあの時と比べものにならないぐらい優しくて、特別甘く感じた。
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作者名：ゆの | 作成日時：2023年1月28日 4時
