３６９ 過去形 ページ19
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『・・・ユチョン。
今から私が話す事を
黙って聞いてて欲しいんだ。』
『・・・・・。』
俺は黙ったまま、
目の前に開けていた冷蔵庫の扉を
静かに閉めた。
Aは俺の背中に顔をつけたまま、
話を続けている。
『本当に本当にね？
ユチョンに・・・感謝してる。
こんな気持ち、
私でも持てるんだって。
・・・・・。
誰かを不幸にしか出来ない自分に、
価値なんか無いと思ってたから。
ユチョンのおかげで私、
この３ヶ月間、凄くシアワセだったよ？』
待ってくれ。
シアワセだったって。
・・・過去形？
・・・ドクン。
心臓が、痛い。
動揺を隠せない俺は
振り返るのをためらった。
俺の背中にくっついたまま、
Aはまた話し出す。
『お母さん、
・・・私をね。
捨てた時に。
私をね、』
・・・え。
その言葉を聞いて、
ついに驚いて振り向いた。
『A・・・待っ・・・。』
待ってくれそれ以上は
言わなくてい・・・
『・・・あの日。
うちに帰ったら知らない女の人と、
・・・男の人が２人いて。
お母さんは、どこにもいなくて。』
ドクン。
自分の心臓の音が
大きく高鳴るのが聴こえる。
その場から逃げ出したい気持ちとは
反対に、
Aの口から目が離せない。
動けない・・・。
『その女の人笑ってた。
私に言ったの。
「あんた、母親に捨てられて、
私に売られたんだよ。」って。
それから男の人が近づいて来て、
・・・私、逃げようとしたんだ。』
ドクン。
『でも・・・後ろから
髪の毛を引っ張られて。
痛い事されるのは
いつもお母さんにされてたから
足がすくんでしまって。
動けなくなった所を
上から・・・押さえつけられ、
着てた高校の制服、を、・・・。』
こめかみがぼうっとして
現実味が無いのは、
脳が受け入れを拒否しているからか。
『A、言うな。
それ以上、言わなくていいから・・・ッ！』
俺は強い口調でそう言い、
Aの手を握った。
・・・・・。
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作者名：ゆうたろう
| 作成日時：2017年3月16日 12時
