第146話 ページ26
「だから、俺が聞いてんだよ！久々に出てきて、ボケてんじゃ」
言い終わる前に、椿の拳が彼の顎にあたり、司は後ろへと吹っ飛ばされる。
「誰がボケてるって？お姉さまに向かってなんなの口の利き方。一体何なの？え？」
お腹の上に乗る足を司はどけることができない。姉の言葉に含まれた恐怖に、逆らうことは出来ないのだ。
滋が地面に手を叩きながら、カウントする様子を見て、桜子は呟く。
「あれも十分、複雑な家庭環境だと思いますけど」
「…」
美作は桜子の言葉に否定することは出来ず、黙り込んだ。
「知らないわよ、何処にいるかなんて」
「お姉様も分からないんですか」
お腹を摩りながら、ソファに腰を掛ける司。
「だって、もう十何年も会っていないし。明るくて可愛いポッチャリとした子だったけど」
椿の記憶から出てきた従兄の話は、美作たちには想像ができないものだった。
今とは真逆の幼少期。
あまりにも違いすぎることである。
「可哀想よね、生活の保障はあるんでしょうけど。私が高等部の時、一人で暮らし始めたって聞いたわ」
「…かわいそう？？
タマも姉ちゃんもかわいそうかわいそうって言うけどなぁ、可哀想な奴はずる賢くて卑怯でいいのか！？」
「あのねぇ」とため息をついた椿は、司の心をズタボロに傷つける内容を述べていく。
「今、ざっくりと話聞いて思ったけど。
つくしちゃんが清永ちゃんを選んだとしたら正解よ。苦労してる分、人の気持ちを分かるでしょう“誰か”と違って」
「……」
壁に体を貼り付けて、項垂れる司に桜子は心配そうに見る。
「傷ついてますけど、いいんですか？」
「いいのよ、放っといて」
「司」
名前を呼んでも反応しない司だが、聞いていることを前提に椿はまた話し始める。
「あんたはつくしちゃんに関して坊っちゃんのワガママ以外の何でもないの。
欲しいオモチャが手に入らなくて泣いているガキと同じ。何かっていうと反抗して家を出る、一人で暮らすって言う」
彼女の話の内容は、自身の過去の失敗から経験したことだから言えることである。
司と同じように、住む環境が違う異性に恋をして、親によって引き離された子供の頃。何度、家出をしたのか数え切れないほどある、と椿は（人１）に話したことがあった。
「外堀から攻めてても城主には届かないの。
正面から城主を切り捨てなければ、城は落ちないわよ」
素直に頷けるその内容は誰が聞いても納得がいくだろう。
「かっこいい」
「さすがですね」
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揚羽 - 面白いです!!続編も楽しみにしてますね (2021年6月13日 17時) (
レス) id: c6646fb52d (このIDを非表示/違反報告)
たいやき(プロフ) - ネコさん» ありがとうございます！頑張ります (2018年6月13日 17時) (レス) id: 8ac49be7a6 (このIDを非表示/違反報告)
ネコ - part4移行おめでとうございます。更新頑張ってください応援しています。 (2018年6月11日 14時) (携帯から) (レス) id: 74ccaa5d41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たいやき | 作成日時：2018年6月11日 1時
