第136話 ページ16
制服のブレザーに付いたポケットから小さな振動を感じる。
携帯が鳴っていることに気付き、(人1)はすぐさま取り出した。携帯の表示画面に映る文字は彼女たちの名前ではなく、「岡田准一」だった。
一つため息をついた(人1)は携帯を開き、通話ボタンを押す。
「はい、もしもし」
「もしもし、(人1)!」
「何でしょうか、ゴリラ男。動物園に迷子のゴリラが見つかったって連絡しますよ」
「ゴリラやないし!頼むから、話聞いてや」
「私、今准一君に構っている暇はないんですけど」
つくしの行方が分からない今、また漁村へといなくなった時のような不安が(人1)の頭の中にはいっぱいだった。
そもそも、彼氏がいる身で合コンに行くきっかけになったのは彼が原因だ。
「今は忙しい、こっちから連絡するからそれまでは電話かけてこないでね」
准一が有無をいう前に乱暴に電話を切れば、(人1)は今日何度目かのため息をついた。
先ほどまでの合コンのことが頭をよぎる。
つくしは自分の行動を振り返って、考え込むうちにはぐれてしまったんだろう。気付かなかった自分も情けない。
携帯のメールボックスには、滋たちがまだつくしを見つけていない内容が入っており、(人1)は今夜はもう見つからない気がしてきた。
空を見上げれば、黒と紺色の間にある色が塗りつぶされたような夜空が広がっている。
都会は夜も明るすぎるせいなのか、星はほとんど見えず、(人1)の心を寂しくさせるような景色だった。
携帯電話の音が鳴り、目が覚める。
しかし、朝が弱い(人1)は少し意識がはっきりしておらず、なかなか起き上がることは出来ない。
寝返りを打ち、手で携帯の場所を探り、物体がそれだと分かれば掴み、自分の方へと持ってくる。
「は、い……もしも、し」
「まだ起きてないね、大きい声出して起こしてあげようか」
「遠慮しておきます」
電話を掛けてきた相手は滋だった。
「つくし、見つかった?」
「いや、見つかってない」
「どこ行ったんだろ、家にも帰ってないらしいんだよね」
「誘拐されたとか」
「……どうしよう」
沈黙が流れた後、電話の向こうで慌ただしい音が聞こえる。
食器が割れるような音や乱暴にドアを閉める音、メイドの声。
さすがに、今冗談で言うことではなかったらしい。
(人1)は少し後悔した。
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揚羽 - 面白いです!!続編も楽しみにしてますね (2021年6月13日 17時) (レス) id: c6646fb52d (このIDを非表示/違反報告)
たいやき(プロフ) - ネコさん» ありがとうございます!頑張ります (2018年6月13日 17時) (レス) id: 8ac49be7a6 (このIDを非表示/違反報告)
ネコ - part4移行おめでとうございます。更新頑張ってください応援しています。 (2018年6月11日 14時) (携帯から) (レス) id: 74ccaa5d41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たいやき | 作成日時:2018年6月11日 1時