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24話 ページ25

なんだかあたたかかった。目を開けるといつもの無機質な天井ではなく知らない景色が写った。

ボクはベッドで寝ていたらしい。モコモコの毛布がかけられていた。

思わず起き上がる。相変わらず足は痛んだがあまり気にならなかった。それよりもここはどこだろう。

また「おうち」に連れ戻されたのだろうか。いや、こんな所はなかった気がする。


「おうち」は冷たくて、寒くてひとりぼっちの場所だった。今もひとりぼっちだが不思議と寂しさは感じない。

あたたかいからだろうか。それだけでもない気はするが。


不意に部屋のドアがひらいた。

「起きたのか。体調は大丈夫か?」

『だれ。』

「俺か?俺は織田作之助だ。」

『おださん。』

「お前の名前は?」

『29番。』

「番号ではなくて名前だ。」

『優秀な実験体?』

「もしかして名前、ないのか?」

『子供の実験体には名前はいらないって言ってた。』

「そうか。お前の事情はよく分からないが番号や優秀な実験体という呼び名では少し困るな。名前、つけてもいいか?」

『ボク、実験体じゃないの?』

「お前は実験体じゃない。そうだな...。Aだ。」

『A?』

「そうだ。お前の名前はA。」

生まれて初めてもらった贈り物、というものになんだか嬉しいような、喜んでいいのかわからない感情が渦巻いた。






なんとなく打ち解け、相手から警戒心を感じないため忘れていたがもしかして私は新たな「おうち」に連れてこられたのだろうか。




『おださん、ここはどこ?新しい「おうち」?』

「おうち?」

『ボクが今まで住んでたところにいた人達はみんな此処はおうちだよって言ってた。けど此処は彼処とは違う。此処はどこ?私は此処で何をされればいいの?』



目を見開いておださんは固まった。あまり表情の起伏は表れないみたいだけどそれでも驚いているのがわかった。

顎に手を当ててかんがえる。ボクも真似してみた。
前の「おうち」にいた人たちもよくやっていた。こうすれば人間というものはなにか考えつくのかもしれない。


「此処はおうちじゃない。」

『じゃぁどこ?』

「お前の居場所だ。」

『居場所?』

「あぁ。此処で暮らし、育っていけばいい。ただそれだけでもういいんだ。」

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夕李(プロフ) - 双黒最高か!!!さん» 更新遅くなってすみません!気長に待っていただけると嬉しいです。よろしくお願いします! (2020年9月13日 14時) (レス) id: a1ecf080dd (このIDを非表示/違反報告)
夕李(プロフ) - 苑歌さん» ありがとうございます!更新ほったらかして3ヶ月が経っていました...申し訳ないです。これからもよろしくお願いします (2020年9月13日 14時) (レス) id: a1ecf080dd (このIDを非表示/違反報告)
双黒最高か!!! - 更新待ってます(´TωT`) (2020年9月2日 17時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
苑歌(プロフ) - 話が好きすぎるのですが!いいですねぇ。応援しています! (2020年6月10日 22時) (レス) id: b9c45128c7 (このIDを非表示/違反報告)
夕李(プロフ) - 恋成さん» 尊敬だなんて…!!ありがとうございます!過去編長く続きますがよろしくお願いします! (2020年5月18日 0時) (レス) id: a1ecf080dd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夕李 | 作成日時:2019年11月30日 16時

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