ゴミ山の魔女【magica】 ページ1
「さよなら...アキヒコさん..」
「クミコ...」
空港で、悲壮な表情を浮かべる端正な顔立ちの青年。彼に、栗色の髪の乙女は儚げな笑みを浮かべた。
スーツケースを引きずり、乙女は海外への切符を握りしめる。そして、今にも溢れ落ちそうな涙を堪えるように、今から飛び立つ空を仰いだ。
「もう時間だわ。ありがとうアキヒコさん。
私...遠くに行ってもあなたのこと....愛しているわ」
そう零し、乙女は一歩を踏み出した。
_____刹那。
「待ってくれ!クミコ!」
アキヒコが唐突に、クミコの背中を抱き締める。そうして一言、耳元で囁いた。
「クミコ。僕は君になら全てを晒け出せる。だから行かないで欲しいんだ」
「でも...」
瞳をうるわせて小さな体を震わせるクミコの髪を撫で、アキヒコの指がクミコの唇に触れた。
「クミコ。後ろを振り返ってくれ」
「...っ!アキヒコさん!」
二度と振り返らないと決めたはず。
愛の前ではそんな決意さえも霞んでしまうのだと、確かにクミコは実感した。
キラキラと煌めきを讃えた乙女の涙が宙を揺蕩う。
______光源があった。
クミコが振り返った先の出来事だ。
そこは眩い光で満ち溢れていた。
「クミコ...僕、実は若ハゲなんだ」
青年の右手には、薔薇の香りのする美しいカツラが握られていた。
「アキヒコさん....光源にもなれるなんて...なんてステキな人...!」
「クミコ...!」
「しかもこの触り心地...ツル...えっめっちゃツルやん...ツルツル....ツルツル..ツルッツルンルン.....ツル...ohhhhhhyeeeeeeees!!!!!!!!!!」
「FOOOOOOOO!!!!!!!!」
___「いやわけわかんねえよ!!」
「なんだよ相手が若ハゲって!!ねえよ!」
magicaはそう言うや否や、上記の内容が描かれた漫画の原稿用紙を引き裂いた。
スランプというものは、得てして人...否、モンスターを成長させるものであると、magicaはしかと心得ている。
だがしかし。
「私には恋愛経験のかけらもありはしない...結局のところ、現実と空想は袂を分かつことができないのだ...」
そう零し向かったのは、ゴミ山の外に繋がる道。引きこもり生活をやめる。
決意して仰ぎ見たのは、本物の夜空とは言いがたい、瞬きをこぼす洞窟の天井だ。
だが、magicaは、それが好きであった。
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糸奇とカービィとアンテとコンパス好きトウキビ(プロフ) - 更新しました! (2018年5月8日 20時) (レス) id: 897976709d (このIDを非表示/違反報告)
キャラル(プロフ) - Twitterで、この作品の事を紹介してみたいのですが、良いでしょうか??(あまり発言力はないので期待しないで寝) (2018年1月27日 7時) (レス) id: a7ec5ba9ee (このIDを非表示/違反報告)
黒木燈(プロフ) - 更新完了しました! (2017年12月26日 7時) (レス) id: b7d60aca1c (このIDを非表示/違反報告)
黒木燈(プロフ) - 更新します (2017年12月26日 5時) (レス) id: b7d60aca1c (このIDを非表示/違反報告)
ねこうさぎ(プロフ) - すみません!更新できそうにないので、どなたか代わりにお願いします…… (2017年12月6日 19時) (レス) id: 08c7ee3a1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:地下世界のモンスター達 x他5人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2017年11月21日 17時