夕虹百日の旱《虹》〈1〉 (ページ27)

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真っ暗なざわめく会場内で駆け回る黒い影。

バルコニーに居る重岡は地面に手を付き、無線機の無い右耳を研ぎ澄ます。

犯人の足音や振動から犯人の居場所を割り出しているのだ。

そんな重岡のそばで未だ電線を握りしめる藤井は

自分の無線機を通して外にいる警備員の無線機に侵入し、通報をしていた。

そして重岡から命令を受けた小瀧は桐山の力により暗視ができるようになった体で

ちょこまか動いていく女を追いかけ

彼女の背中に人差し指を向けた。

「きゃっ！」

その瞬間に彼女の前から突風と言わざる負えないほどの向かい風が1点に集中して吹き

彼女は後ろ向きに吹き飛ばされた。

そして、回り込んだ濵田は、申し訳なさそうな顔をしながらも

手のひらサイズの小さな懐中電灯の光をつけ

彼女の目元にその手をかざした。

「ぎゃあっ！！！！」

彼女が悲鳴をあげるのもそのはず。

濵田の手のひらからは強烈な光が生み出され

瞼越しとはいえ目の前でその光を浴びた女は

目を押えその場にしゃがみこんでしまった。

失明はしないだろうが、きっと周りが明るくなったとしても彼女はすぐには目を開けることは出来ないであろう。

「撤収！！！」

重岡の声と共に、WESTのメンバーは各自1番近い出入口から外に飛び出した。

そして入れ替わる様に警備員が飛び込んできて、会場には眩いほどの光が戻ってきた。

神山が時間を戻してから

わずか、5分の出来事だった。