【歌い手】人間不信。３ (ページ47)

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【第九十八話】ページ47

「・・・・・そ、そうだそらるんにAちゃん！！

もうそろそろ、ご飯食べにいかない？」

この空気をどうにかしようと思ったのか、松下さんが声をあげる。

それと同時に、私のお腹が大きく鳴った。

「・・・・・あっ」

恥ずかしくなって俯いてしまう。

そしてすぐに聞こえてきたのは、松下さんの笑い声だった。

「あっはっは！今タイムリーにAちゃんのお腹鳴った！！凄い！！私天才かも！？」
「松下の場合、同じ天才でも災難の方の天災だな」
「えっそらるんそれどういう意味」

これだけしんとした空気の中でよく言えるなと思い、くすっと笑ってしまう。

そんな私を見て松下さんはほほ笑んだ。

「うん！やっぱり笑ってようよ。・・・今更言うのあれだけど、やっぱり私、ああいう空気は苦手なんだよね。なんか堅苦しいし。

だからさ、もう全部忘れちゃって、ご飯食べに行こう！ほら、もう皆も待ちくたびれてるところだと思うから！」

松下さんのいう『ああいう空気』とは、きっと灯麻さんのことについて話していたときのことだろう。

私もああいう雰囲気は好きじゃない。やっぱり楽しいところでなくちゃ。

そう思うとなんか気持ちがぱーっとしてきて、私も笑顔で答える。

「そう・・・ですね！もうぱーっとご飯食べていきましょう！きっと皆さんも待ってますよ！」
「うん！じゃあそらるん行こう！私今日何食べようかなー」

そらるさんはずっと黙っていたが、やはりそらるさんも空気を変えたかったのだろう、「分かった」と微笑して呟いて立ちあがった。

そしてそのあと不意に真顔になり、低い声で一言、

「松下、奢れ」

とだけ言って先に部屋を出て行った。

おいて行かれた私と松下さんの間に沈黙が流れる。

先に口を開いたのは、松下さんだった。

「ねぇ、なんかさっきから私の扱い酷くない？」

涙声で言う松下さんに、私は思いっきりキラキラした作り笑顔で言い放った。

自分の今までの行いのせいですよ、と。