【歌い手】人間不信。３ (ページ44)

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【第九十五話】ページ44

「・・・灯油くん、頭を下げて、僕らに言ったんだ。

『灯麻は対人恐怖症だから、誰にも言わないでほしい。

もちろんこんなこと駄目だって分かってる。でも、言わないでほしい』・・・ってね」
「・・・・対人恐怖症、だから・・・」

私が小さくつぶやくと、そらるさん達は困った顔で笑った。

そらるさん達も、きっと複雑なのだろう。

「・・・・ねぇAちゃん」
「へ？」
「私が初めて灯麻くんに会った時、凄く興奮しちゃってね。だってあのとーくんの双子の弟だよ！？ヤバい超可愛いんですけど！！ってなちゃって」
「は、はあ」

いきなり松下さんが話し始めた。なんか怖い。

「そのとき私、灯麻くんが対人恐怖症だと知らないで接してたの。だからいつも通りのテンションで、灯麻くんに抱きついた」
「へっ！？」
「・・・・・あ、ああ！あのときか」

あの時の松下と今の松下、あんまり変わらないな、とそらるさんが言う。

え、抱きついたって、ええ！？

「可愛い可愛いって、頬すりよせたりおでこにキスしたり。

あ、さすがに唇は奪ってないよ！奪うのは灯麻くんの対人恐怖症が治ってからにしようと思ってるから！」
「松下、お願いだから、自重して」
「え？これでも結構抑えてる方だけど？」

にっこりとした笑顔で言う松下さんを見て、そらるさんがまた溜め息をつく。

・・・・そらるさんが溜め息付きたくなるのも分かるわ・・・

「で、話の続きだけど、まあいろいろ灯麻くんにやっちゃった訳ですよ私。そしたら灯麻くん、どんな反応したと思う？」
「えっ！？」

いきなり聞かれたので変な声がでる。

「・・・うーん・・・そりゃあ、驚いたり嫌がったり？」
「嫌がったりってAちゃん何気に酷いよ！？」
「すいません」

そらるさんがいいぞもっとやれ、と言っていたような気がするが、気にしない。