【歌い手】人間不信。３

【第八十四話】　ろんｓｉｄｅ ページ33

「安定のツッコミいただきました。で、聞きたいことって？」
『チャット部屋で松下の今日の報告見てた時に、すこし気になる文があったから』
「それが私のことだった、とかそういう？」
『うん。えっと確か、ろんは何か知ってるみたいだったけどって』
「え？私が何か知ってるってどういうこと？」
『ってなったからろんに電話したんだけど』






なるほど。



っていうかちょっと待て、話がかみ合わない。何を私が知ってるって？






「なんかよく分からないから、とりあえず松下の今日の報告言ってよ。そしたらなんか分かるかも」
『分かった』



・



・



・

―――――――――――――――――――――





『という訳ですけど』
「・・・・」






ちょっと待て


どういうこと？






私は廊下を歩いていた足を止め、左手で自分の髪をぐしゃっと掴んだ。





「松下あいつ、まさか」
『・・・・ろん？どうかした？」






そらるが心配そうに呼び掛ける。


ああもう、こんなことって。松下って、松下って。






「ねぇそらる、そらるってさ、あのこと知ってるよね？Aちゃんのこと」
『・・・・え？』





嘘であってください。お願いします。


今そらるはとぼけてるんですよね。そうだよね？松下。









「知ってるんだよね？







Aちゃんが灯麻くん見つけたこと」







『・・・・・・・は？』







あぁ、松下、こんなことってありですか。



あなたはいつまでたっても馬鹿なんですね。






「まさか、知らない？いやそんな訳ないよね？ちゃんと松下に聞いてるんだよね？そうだよね？」





落ち着かせるように早口に言う。



しかしそんな私とは裏腹に、そらるは落ちついた声で電話越しに言った。







『どういうこと』





たった一言ではあったが、その一言には色々な感情がこもっていることが分かる。




戸惑い、驚き、混乱、そして―――――――怒り。








「・・・・・知らなかった？」






蛇に睨まれた蛙のように、私は小さく尋ねる。



返って来た返事は短かった。







『知らなかった』






その返事を聞いた瞬間、私は叫びそうになった。

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