No.185 ページ17
＿＿＿
「(いかん、レシプロが切れる…！さっきの蹴りで冷却装置が故障したか…！？)」
脚の違和感に飯田は目線を苦しそうに配る。このままではエンストしてさっきとは違う状況で動けなくなってしまう…！
どうすればと考えに耽る前にある案が脳裏に浮かぶ
装置が壊れたのなら他で補えばいい
「轟くん！温度の調整は可能なのか！？」
「左はまだ慣れねえ！何でだ！？」
＿３対１による近接の攻防戦、傍から見れば多が優勢と見えるだろうがそうとは言えないほどヒーロー殺しは自身の俊敏、身体能力を活かしタイマンと変わらない戦闘を見せる
その間私は考えていた。私個人で聞きたいヒーロー殺しのこと
ずっと考えていたのだ、ここで聞かねばいつ聞くんだ…そう思っていた
「やっぱやめだ」
「あ？」
「五十嵐さん！」
「あんたにあんたが思う"本当のヒーロー"聞こうと思ってた。でもやめだ」
ヒーローが嫌い、敵が嫌い、この社会が嫌い
嫌い、嫌いと何度も言い続けてきたけど、そこに終わりはあるのだろうか。ずっとこのままだと死ぬまでこの苦しみから逃れる事が出来ないのではないか
否定し続けていれば、緑谷達…轟に、顔向けできない
自分から聞く前に聞いていた緑谷達とステインの会話。それまでの内容とさっきの言動と「論外」と切り捨てた男に聞くことは愚かであると気づいた
男がどんな幼少、どんな人生を歩んできたのかは分からない。相手もそうだ
しかしさっきの一言で決定的な違いを見つけた
「あんたと私は違う。私には一緒に戦う仲間がいる、一緒に考えてくれる仲間がいる」
「仲間がいようと同じだ。自身が私欲に塗れていれば何れ過ちを犯す」
「あんたに夢はねえのかよ！！」
あんたには共に寄り添う仲間がいたか。共に学ぶ仲間がいたか
他力本願だと思われるだろう。そう思われたっていい、そこに…背中を任せられる仲間がいるのなら…。どんなことだってやれる、どんなことだって乗り越えられる気がするんだ
「だからあんたに聞く必要はなし！私は私のやり方でなりたいもの、見つけてやる！」
「いい気になるなよ小娘…！」
力の籠った手で親指を立て、自分に突き刺すとヒーロー殺しはさらに青筋を浮かばせ、何人ものヒーローを葬ってきた刃が向かってくる
胴を斬られる…！理解して上空に逃げ込むがその一瞬を見切ったのか路地裏の壁を伝って追い、左のわき腹を抉るように切り裂かれた
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