#066 ページ7
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地下牢への扉を開き、まず目にしたのは乱雑に放棄された藁の山と、いくつかの椅子。そしてキャンドルやティーセットのみで、なんとも殺風景な部屋であった
「誰もいないなあ」
「せっかく助けに来たのに?」
「何?助けですと?」「しーっ、わからんぞ!敵かもしれん」誰も居ないはずのこの部屋から、細々と男性の声が突如として聞こえて来た
もしかして、本物のオバケだったりするのだろうか…
……でもそういえば、地下倉庫の扉を通させないようにしていたのは、タンスの姿をした女性だったような…
「僕たちは敵じゃないですよ〜?」
「うん、ベルに頼まれて来たんだ」
それまでは誰も1ミリたりとも動こうともしようとしなかったが、『ベル』という言葉を聞いた途端に一部の小さな家具達が、歩み寄って来てくれた
良かった、どうやら信じてもらえたようだ
「俺はソラ。二人はドナルドとグーフィーで……」
「サツキです」
好奇心旺盛なドナルドとグーフィーは近くに寄って来た振り子の置時計を持ち上げ、興味深そうに上下に振る。振られている本人は気分が悪そうだ
「無事みたいだな」
「それはもう、おかげさまで」そう答えてくれたのは、キャンドルの姿をした紳士的な男性
「みんなも魔女に姿を変えられたの?」
「なんだ?魔女?そうそう、みんな魔女の呪いだ」
「あれは何年前だったか………」
「とても寒い晩だったわねこの城におばあさんがやって来て、「一晩泊めてください」と言ったの」
「しかし、我らのごしゅじんである王子は…」
置時計、キャンドル、ティーポットと順に話してくれるが、置時計はもういいだろうとドナルドの手によって開かれていた振り子をしまう戸をピシャリと閉じ、降ろしてもらうと咳払いを一つすると話を続けた
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