#073 ページ14
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「……ベル、私は正気をなくしていたようだ。おまえを傷つけていなければいいが……。すまない」
ベルが戻ってきて、最初に始まったのはビーストの謝罪の言葉からであった
それに彼女は「いつものビーストではないとわかっていた」と、気にしていない素振りを見せていたが、代わりに『いつものビースト』に対して怒っていると話した
「全然私を信じてくれないんだもの」
ケンカ……というより、ベルが今まで溜めていた鬱憤を彼女なりに吐き出している。しかし、ベルが言えば言うほど、見かけによらず気弱なビーストは黙る一方
距離が離れていってしまってる事に、コグスワースは『時間』の事を気にし始めていた
「どうしました?」
「バラ、覚えてます?」
「ビーストの部屋の?」
「そう、あのバラが枯れるまでにご主人様が誰かを愛し、愛されるようになれば」
「皆元の姿に戻れるのです」
そういえばそんな事を話していたような……。ハートレス退治やビーストの事ですっかり忘れてしまっていた
でも、今現在、ホロウバスティオンで出会ったあの頃よりも距離が離れてしまっているのに、果たして大丈夫なのだろうか。皆無事に元の姿に戻れるのだろうか
しかしポット夫人はとても希望に満ちた瞳で、向かい合うビーストとベルを見つめ、「きっと大丈夫よ」そう言った
それにグーフィーは共感するが…、そういう、なんと言うか、恋愛の事に疎い私とソラではとても理解することが出来ず、胸の内に靄がかかり、むず痒くなった
すると突然、さっきまで何も持っていなかったソラの右手にキーブレードが現れた。ハートレス等が出てきた訳では無いのにだ
ソラは手にしたキーブレードを振りかざし、天に向けてその切先から光を放つと、辺りはキラキラと小さな星、雪のようにチラチラと散り、消えていった
「何事だ?」
「道がひらけた」
「じゃあ、行くの?」
「そういう事になりますね」
「また寂しくなっちゃうわね」ベルは柔らかい頬を、自身の右手で添えながら切なそうに言った
「もっと仲良くなってね」
「おまかせください!」
「気をつけてね」
「いつでも歓迎するぞ!」
「リク、王様、XIII機関、ハートレス……、なんでもいいから、わかったら教えて!」
「わかりました、ご達者で」
本当の別れではないが、最後に伝える事だけ伝えると、私達は次の世界へ向かう為、船へ帰還したのだった
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