油蝉 (ページ2)

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真夏ページ2

六月に沢山雨が降ってくれたおかげで、今年もまた沢山野菜が採れました。

　特にキュウリなんかすごく良いものが生ってたのよ。あなたなら、「全部ワサビ漬けにしろ！宴会だ」なんて騒いだのかしらね。

　本当に夏は騒々しいったらありゃしなかったわ。

　騒々しいと言えば、今年もまた油蝉がうるさく鳴いています。そう言えばあなたは、生まれ変わったら油蝉になりたいなんて言ってましたね。

　私が「あんな羽模様も汚くて、うるさいだけの虫になりたいなんて理解できないわ」というと、「ふざけるな」と怒鳴り返してきましたね。

何でしたっけ、あの時のあなたの言葉。

「あいつらは、命を燃やしてるんだ。あの鳴き声は雄たけびなのさ、俺は酷く憧れるね。あいつらみたいに、命を燃やし尽くして最後の時まで生きていてぇよ」

　だったかしら、あの時は微塵も理解できなかったけど、今なら少しわかるわ。

　私たちの生は酷く長くて、燃え続けられるほど強くはなれないもの。

　吠え続ければ声は枯れて、飛び続けるための羽も私たちは持っていない。今はあの油蝉が羨ましくて仕方ないの。きっと彼らは後悔なんて知らないのでしょうね。

　私は後悔ばっかり。

　あなたが先に逝ってしまったことが私の一番の後悔でした。

　そういえば最近、あまり体の調子が良くないの。もうすぐあなたに会いに逝けるのかしらね。

　なんてね、お盆には孫たちにも会えるんですもの。まだまだ死ぬ気はないわ。

　でももし寂しさに耐え切れなくて、あなたに会いにいってしまってもどうか怒らないでね。

キュウリのワサビ漬けも作るから、また一緒にお酒でも飲みましょ。

　遠くない再会を楽しみにしているのが、私だけじゃなければいいのだけれど。

　片思いはもうこりごりだわ。

　今度こそ、ずっと傍に置いてください。