零度【オリジナル】 (ページ8)

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嫌いだページ8

それからは、二人とも黙々と延々に
作業をし続けた。

夜までかかったとはいえ、
二人で一日で終わらすことができたのは
彼女の並外れた手際の良さのおかげだ。

非常に不本意だけれど、聡明ということも
認めなければいけないようだ。

「疲れた…もう二度と付き合わないからな。」

項垂れる僕に、彼女は優しい微笑みを浮かべた。
彼女は常に笑顔を浮かべているが、
ここまで優しいのは始めてだった。

「えぇ、悪人にしては上出来の仕事だったわ。
また、お願いするわね」

どうやら、彼女の耳には僕の言葉は入らないようだ。

「それにしても、今回、僕が来なかったらどうしてたんだい？
もしかして、一人でやったとか？」

「あなたにそんな権利はないのだけれど…
まぁ、そうね。一人でやっていたと思うわ。」

「なら、それは辞めた方がいい。
最近は物騒だし、君は見てくれがいいからね。
君くらいの歳の子が行方不明になってる事件がここら辺相次いでいるみたいだし。」

「あら？心配してくれるのかしら？
あなたのそういうところ含めて私は好きよ。愛してさえいるくらい。」

「辞めてくれ、僕は君が嫌いなんだ。」

彼女は善人だから、嘘を付かない。
その言葉はどこまでも真っ直ぐで
きっと、今の何気無い愛の言葉も
本物なのだろう。

だからこそ、僕も本音で答える。
僕は彼女が、嫌いだ。

「だと思った。」

そう言って彼女はニパッと笑った
彼女の心は晴れのまま
僕の好きな雨にはならない。

「それに、きっとその犯人は
私のことは狙わないと思うわ。」

彼女はステップを踏みながら
僕に笑顔で断言する。

「なんで、そう思うの。」

「きっと、私のことが嫌いだから」

僕はほくそ笑んだ。