三十六人目 ページ38
カイトside
A「…本当……」
Aちゃんは細い指で流れた涙と目に溜まる涙を拭った。
A「本当は…カー君が、私を、孤独から助けてくれると、思ってたの」
俺は何も言えなかった。
A「でも、貴方は…私を、いじめられているというだけで、同じ人間なのに、頑張って生きてるのに、突き放して…。好きな人に拒絶されたら、私…!!」
す、きな、人…?
カイト「ご、ごめん…ごめん、ゆう」
俺がとっさにそういうと、彼女は首を振った。
A「さっ、行こう?カイト兄」
もうゆうは奥に押し込まれたようだ。
Aちゃんは、俺の手を取って、校舎の中をどんどん進んでいった。
A「あっ、アタシの教室だ。こんなとこだったんだ…」
カイト「そっか…知らないんだ」
A「……次行きましょっ」
その話を消すように、Aちゃんはまた足を進めた。
校内を歩きまわり、最終的に屋上にたどり着いた。
A「なんで、ここに連れてきたんですか?」
カイト「…君たちに、ゆうの中に戻ってもらうため。ゆうを取り戻すため」
俺はきっぱりと言い切った。
A「なんで?また私が傷つくじゃない」
辛辣な言いようだが、仕方がない。
カイト「今度は、今度こそ、僕が守る」
A「よく言い切ったものね」
鋭い目つきで俺を見る。
カイト「ゆう、目を、覚ましてくれ…」
A「………」
俺がそういうと、Aちゃんは黙った。
カイト「このままじゃ、君達が、壊れてしまうよ」
A「………」
俺の言葉に、どこか遠くを見ているAちゃん。
カイト「頼むからっ…目を、覚ましてよ…!!」
少し涙目になりながらAちゃんの肩を掴むと。
ぐらっ
Aちゃんの体の重心が急にぶれ、俺の方に寄りかかってきた。
カイト「Aちゃんっ!?」
A「みん、な……」
そう呟いたきり、Aちゃんは何も言わなくなった。
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