ヒメユリの語るバラとヒマワリの昔 (ページ2)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:1,761 hit

- ページ2

・

アキトの心はいつまでも純白だった。

綿飴のようにふわりと柔らかいその心は

少し前から一滴ずつ

相手にもアキトにも見えない水を落とされて、

ついこの間

溶けきってしまったのだ。

綿飴の中に見えたのは、鈍く光る鉄の塊。

アキトはひとり、空から降ってくる石ころ達を跳ね返した。

何度も、何度も。

まわりに住む大人たちにも、

隣にいてくれる*姫百合くん*にも頼らず。

ただひとりで、悟られないように笑顔で。

当たり前に鉄の心はでこぼことボロボロになっていく。

それでもめげずに笑顔を描くアキトに
*姫百合くん*は何度も問いかけた｡

「だいじょうぶ？はなし、きくで？
　なんかあったん？だれがしたん？」

なんて、彼もめげずに心配するのに

「だぁいじょぉぶ。*薔薇くん*はしんぱいしすぎや」

困ったようにまゆを下げて綺麗な八を描く。

そんな会話をいつもの丘の上でした次の日のこと。

アキトは忽然と姿を消した。

そして入れ替わるように

ボロボロの鉄の塊が落ちてきた。

人々は気味悪がってボロボロの塊を
もっと、もっとと傷つけていく。

人垣の間から
*姫百合くん*は鉄の塊が傷つけられていくのを黙ってみていた。

じわっ、と泪が傷口に沁みた。

・