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放課後、二人で、恋を話した 02 ページ35

ふう、とため息を一つ。自習の壁にかけられた丸い時計を見上げるともうすぐ七時だった。いつ田中君が来てもおかしくない。仕方なしに私は残りの時間を持ってきた本を読んで過ごすことにした。



余り進んでいない本から顔を上げて時計を見上げる。何度かこうしていて、顔を上げる度に幾分かの時間がちゃんと経過している。時計の短針は8の数字に差し掛かろうとしていた。

「…………」

いつの間にか最初にいた男子グループも帰ってしまって自習室に一人になっていた。田中君はまだ来ていない。言葉に上手くできない嫌な感じが全身を包んでいた。

——図書館は九時までだから、それまでに来なかったら仕方がないから帰ろう。

時間の区切りはあるのは幸いだった。諦めが付くから。

——なんか、あったのかな。

不安で心が潰れそうになる。無駄だと解っていてもなんどもスマートフォンを手に取っては黒だけが画面に映った。

ずうっと入り口のドアの方を見ているのも辛くて、かと言ってやっぱり本を読む気にも慣れなくて机の上にうつ伏せになって目を瞑って何も考えないようにした。

最初は心地よかった冷房のひんやりとした風が今は肌寒く感じて身体を冷やしている。

/

それから、どれだけの時間が経っただろうか。乱暴に開けられるドアの音に身体がびくりと反応して、私は身体を起こした。

「ごめん、Aちゃん!」

背後から聞こえてきたのは息を切らしているのがわかる余裕の無さそうな声。振り返れば、そこには急いできてくれたのが一目で解る田中君の姿があった。

「……良かった」

ほっとして、気が緩んで、泣きそうになった。

「遅いから心配しちゃったよ。事故とかなんかあったのかと思った」

でも流石にそれは格好が悪いから堪えて笑顔を作る。隣まで来ていた田中君が戸惑うような顔をした。

「部活長引いちゃって、遅れてごめん。でも俺の方こそ心配したんだけど?七時の時点で連絡したのに返事どころか既読もつかないんだもん」

田中君の言葉にハッとなる。

「っ、ごめん!スマホ電源切れちゃって」
「遅くなる事に怒って黙って帰っちゃったのかと思った」
「そんなことしないよ!?」

そんな事をするような人間だと田中君に思われているのだとしたらそれは凄く悲しい。

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夕色(プロフ) - つばささん» つばささん!ありがとうございますっ。なんとか完結出来ました。でも今だいぶ空気が抜けた風船みたいな状態なので、すぐに次の話を書ける方すごいなーという気持ちでいっぱいです(^_^;)。 (2022年1月24日 19時) (レス) id: 109b0e65b2 (このIDを非表示/違反報告)
つばさ - ID違うけどつばさです!完結おめでとうございます!キュンとしたり切なかったり…本当に素敵なお話でした(^^)終わりは寂しいですがお疲れ様でした✨ (2022年1月24日 16時) (レス) id: d22c4c2f70 (このIDを非表示/違反報告)
夕色(プロフ) - ★mmiioo★さん» コメントありがとうございます!月曜固定更新にしたのは、自分的に楽だったからですが読んでくれてる方にも楽しみにして頂いたみたいで嬉しいです。二人とも良い子なのできっと良い人に巡り会えるはず!自己満足な裏設定もお読み頂きありがとうございました😊。 (2022年1月24日 14時) (レス) id: 109b0e65b2 (このIDを非表示/違反報告)
★mmiioo★(プロフ) - はじめてコメントします。このお話を見つけてから、毎週月曜日が楽しみでした。ようやく二人が結ばれてほっとしましたか、失恋した2人も近い未来、大切な誰かと出会えますように。皆優しくて、読んでいて心地いいお話でした。裏設定、面白かったです(*´∀`)♪ (2022年1月24日 10時) (レス) id: 9bdd0af86e (このIDを非表示/違反報告)
夕色(プロフ) - ubisiさん» コメありがとうございます!なんとか無事に走り切ることが出来ました。青春ど真ん中の話が書きたかったのでそれを感じて貰えたみたいで良かったです。 (2022年1月24日 10時) (レス) id: 109b0e65b2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夕色 | 作成日時:2021年11月22日 8時

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