余裕がなくなる理由を知ってる 04 ページ29
小テストの追試は終わった生徒から答案用紙を提出して先に解散していい。私は少し前に終わったけれど、先に帰るのも気が引けたので時間ギリギリまでシャーペン片手に頑張る慎太郎を待つ事にした。
「どう？半分くらいはできた？」
私が尋ねれば
「多分丁度それくらい」
っと慎太郎が笑って返した。
「あんがとね。待っててくれて」
「別に。教室まで一人だと暇だし」
そんな言葉が建前である事くらいきっと慎太郎は解っている。
「はいはい、そういう事にしとく。ってかお前昼飯は？」
「ユカが代わりに買っといてくれるって」
「そりゃよかった。今からだとろくなの残ってなさそうだもんな」
「異様にカラシの量が多いカツサイドとかね」
一年の頃、何も知らずに食べて涙目になって、だけど偶々ハズレを引いただけかもしれないと思い二個目を食べたけどやっぱり辛くて二度と口にしない事を誓った伝説のカツサイドがうちの学校の購買部には存在している。
「そういやお前、一年の頃俺を罠にはめたよな？『購買のカツサイドおすすめ！』って突然メッセージよこして」
「え！？そんな事したっけ……？」
「惚けんなよ。食べた瞬間辛くて蒸せたら目の前の樹のめっちゃ笑われたわ」
慎太郎の口から溢れた田中君の名前にドキりとする。この二人は、本当に仲が良いのだ。
「そんな事あったんだ。見たかったな」
慎太郎の私を見る眼差しには優しさの中に淋しさが見え隠れしている気がした。やっぱり本当に何もなかった風には多分できない。私も、慎太郎も。それでもこうして一緒に居てくれてる。
「慎太郎、」
「んー」
「ありがと」
何が、とは言わなかった。でもきっと伝わってる。
「どういたしまして」
しょうがないなって感じで慎太郎が笑った。
慎太郎が笑うと私も嬉しくなる。それだけはこの先も変わらない筈だ。
言い足りない「ごめんね」と「ありがとう」が頭の中をぐるぐとしている。でもこれ以上口にした所でそれは自己満足でしかない様な気がして、何度も何度も心の中だけで繰り返した。
余裕がなくなる理由を知ってる 05→←余裕がなくなる理由を知ってる 03
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1403人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夕色(プロフ) - つばささん» つばささん！ありがとうございますっ。なんとか完結出来ました。でも今だいぶ空気が抜けた風船みたいな状態なので、すぐに次の話を書ける方すごいなーという気持ちでいっぱいです(^_^;)。 (2022年1月24日 19時) (
レス) id: 109b0e65b2 (このIDを非表示/違反報告)
つばさ - ID違うけどつばさです！完結おめでとうございます！キュンとしたり切なかったり…本当に素敵なお話でした(^^)終わりは寂しいですがお疲れ様でした✨ (2022年1月24日 16時) (レス) id: d22c4c2f70 (このIDを非表示/違反報告)
夕色(プロフ) - ★mmiioo★さん» コメントありがとうございます！月曜固定更新にしたのは、自分的に楽だったからですが読んでくれてる方にも楽しみにして頂いたみたいで嬉しいです。二人とも良い子なのできっと良い人に巡り会えるはず！自己満足な裏設定もお読み頂きありがとうございました😊。 (2022年1月24日 14時) (レス) id: 109b0e65b2 (このIDを非表示/違反報告)
★mmiioo★(プロフ) - はじめてコメントします。このお話を見つけてから、毎週月曜日が楽しみでした。ようやく二人が結ばれてほっとしましたか、失恋した2人も近い未来、大切な誰かと出会えますように。皆優しくて、読んでいて心地いいお話でした。裏設定、面白かったです(*´∀`)♪ (2022年1月24日 10時) (レス) id: 9bdd0af86e (このIDを非表示/違反報告)
夕色(プロフ) - ubisiさん» コメありがとうございます！なんとか無事に走り切ることが出来ました。青春ど真ん中の話が書きたかったのでそれを感じて貰えたみたいで良かったです。 (2022年1月24日 10時) (レス) id: 109b0e65b2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夕色 | 作成日時：2021年11月22日 8時
