きっとまた誰かを好きになる 4

閑話// 好きなひとの好きなひと 05 ページ5

Aちゃんも最近元気がない気がして、だからなんとなく樹君の事を相談できなかった。相談したらきっと私の為に気を揉んでくれるのが解っていたから。答えがある相談ならいいけれど、きっと答えなんてなくて。でも逆に私にも元気のないAちゃんを気遣う余裕がなくなっていた。




偶然ファーストフード店で会ってAちゃんとユカちゃんと樹君と慎太郎君と北斗君と六人で遊ぶことになったあの日、久しぶりに心から楽しそうに笑う樹君を見て、なのにふとした瞬間切なそうな顔をしている樹君を見て、今更ながらに気が付いた。樹君の視線がいつもいつもAちゃんを追っていることに。

あの日以来、樹君の笑顔が戻った。一度気付いてしまえば、今まで気付かなかったのが莫迦みたいに色んなことが見えてきた。ここ最近、樹君とAちゃんが前ほど話をしなくなっていた。私は暢気にAちゃんが私に気を使ってくれているんだと思って、それはある意味で正解だったんだろうけど。

今にして思えば、私が好きだと思った樹君の特に柔らかい笑顔はいつだってAちゃんにだけ向けられていた。そしてそれに笑い返すAちゃんも嬉しそうで、Aちゃんも何気ない時間にいつも樹君を見ていることにも気付いてしまった。


だから。

だから、多分、私はこれからフラれてしまうのだと思う。期末試験最終日の今日、樹君を中庭の人目のつかない所に呼び出した。人生で初めての告白をしようと決めてから、ずっと心臓がバクバクしている。先に来て待っている私から遅れる事数分、樹君が現れた。

「ごめん、待った？」

そう尋ねる樹君に顔を横にふる。

「ううん。私の方こそ急に呼び出しちゃってごめんね」
「いや、大丈夫だよ。えっと、話って？」

きっと樹君はこんな呼び出しにも慣れているはずだ。察しはついているだろうに、そんな風に困ったように笑って尋ねた。そんな表情も格好良いと私は思う。

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