放課後、二人で、恋を話した 05 ページ38
「…………え?」
「でもAちゃんと話してると全然諦められそうになかったし、二人が一緒にいるのを見るのもしんどいからもう物理的に距離を取るしかないと思ったんだよ」
「…………」
やっぱり、駄目だ。田中君の事になると頭がちゃんと回らない。田中君の言葉を咀嚼しようとしてるのに上手くできない。ただ心臓の音が煩くなって、体温が上がっていってる事だけ解った。
「ほら困らせた」
って田中君が切なそうに笑った。でも違う。そんな顔をさせたい訳じゃない。
「困ってないよ」
咄嗟に出てきたのはそんな稚拙な返事で。
「嘘」
「嘘じゃないよ」
「じゃあ、俺が言った事の意味解ってる?」
「…………それは、自信ない、けど」
田中君の言った事の意味。そうであればいい、と思う事はある。縋るように見上げれば田中君が、唾を呑み込んだ。田中君だけが持つ甘い雰囲気が私を包む。恐る恐るといった様子で伸ばされた手が私の頭を優しく撫でた。
田中君はこちらが戸惑うくらい強引な時もあれば、まるで腫れ物みたいに私に触れる時がある。他人の事は言えないけれど、田中君の言動は時々チグハグ過ぎだ。
でもそんな田中君の事が好きだと思った。ただただ好きだと思った。だから。
「私が好きなのは田中君だよ」
——他の誰でもなくて。
こんな事まで言うつもりは無かったのに、気付けば口からはそんな言葉が溢れていた。
「………………っ、」
田中君が目を見開く。
「……」
「……」
けれど言葉は中々返って来なくって、今更になって、自分の発言が取り返しのつかないものだったんじゃないかと焦り出す。
「ごめん!今の聞かなかった事に」
して、と続けようとした所で声が引っ込んだのは急に田中君に腕を掴まれて引っ張られたからだ。
「無理。聞かなかった事になんか出来ない」
「っ……!」
バランスを崩して前に倒れかかった私の身体は気付けば田中君の胸に飛び込んでいた。細いけれど力強い腕が背中に回される。抱きしめられているのだと理解するのに数秒掛かった。さっきまで身体は冷え切っていたのが嘘のように体温が上がる。
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夕色(プロフ) - つばささん» つばささん!ありがとうございますっ。なんとか完結出来ました。でも今だいぶ空気が抜けた風船みたいな状態なので、すぐに次の話を書ける方すごいなーという気持ちでいっぱいです(^_^;)。 (2022年1月24日 19時) (レス) id: 109b0e65b2 (このIDを非表示/違反報告)
つばさ - ID違うけどつばさです!完結おめでとうございます!キュンとしたり切なかったり…本当に素敵なお話でした(^^)終わりは寂しいですがお疲れ様でした✨ (2022年1月24日 16時) (レス) id: d22c4c2f70 (このIDを非表示/違反報告)
夕色(プロフ) - ★mmiioo★さん» コメントありがとうございます!月曜固定更新にしたのは、自分的に楽だったからですが読んでくれてる方にも楽しみにして頂いたみたいで嬉しいです。二人とも良い子なのできっと良い人に巡り会えるはず!自己満足な裏設定もお読み頂きありがとうございました😊。 (2022年1月24日 14時) (レス) id: 109b0e65b2 (このIDを非表示/違反報告)
★mmiioo★(プロフ) - はじめてコメントします。このお話を見つけてから、毎週月曜日が楽しみでした。ようやく二人が結ばれてほっとしましたか、失恋した2人も近い未来、大切な誰かと出会えますように。皆優しくて、読んでいて心地いいお話でした。裏設定、面白かったです(*´∀`)♪ (2022年1月24日 10時) (レス) id: 9bdd0af86e (このIDを非表示/違反報告)
夕色(プロフ) - ubisiさん» コメありがとうございます!なんとか無事に走り切ることが出来ました。青春ど真ん中の話が書きたかったのでそれを感じて貰えたみたいで良かったです。 (2022年1月24日 10時) (レス) id: 109b0e65b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夕色 | 作成日時:2021年11月22日 8時