余裕がなくなる理由を知ってる 07 ページ32
でも私の気持ちを知ってか知らずか田中君はそんな風にいう。私の部活がバスケ部よりもよっぱど緩い事を田中君も知っているはずなのに忘れちゃったのかな。
「うちの部活なら大丈夫だよ」
「あー、うん。でも一人の方が集中できるから」
「……そっか」
流石にそこまで言われれば拒絶されているのだと解る。解る、けど。
「いつまでもAちゃん甘える訳にもいかないしさ」
なんて、寂しそうに笑わないで欲しい。私が居ない方がいいなら、こんなことは止めて欲しい。こんな風に、優しく手を私の頭に伸ばして、私に触れないで欲しい。
「田中君、」
見上げて目を合わせれば田中君の綺麗な瞳がゆらいだ。いつまでだってそれを見ていたいのに。
「……っ、教室まだ掃除中だし、俺別の所でこれやってくるわ」
直ぐに顔を逸らされて、田中君はプリントを鞄に戻すと教室を足早に出て行ってしまった。私はその背中を見送ることしか出来なくて、胸がずしりと重くなる。
/
「あれ？サオリちゃんも今帰り？」
部活を終えた帰りに偶然下駄箱であったのはサオリちゃんだった。運動部がまだまだ頑張っている時間にうちの部のような緩めの文化部は早めに切り上げる。
「そう。Aちゃんも？」
「うん。何気に部活帰りに会うの初めてだよね」
「確かに！多分いつもだいたい同じ時間で終わってるのにね」
下駄箱から靴を出して上履きを脱いで閉まって、折角会えたのだからと二人で話ながらいつもよりもゆっくりと歩く。
「……Aちゃん、なんか元気ない？」
「え？そんな事ないよ」
ふいにこてっと小首を傾げて私を見上げるようにしてサオリちゃんがそう尋ねたので私は目を丸くする。
「うそ。樹君となんかあったでしょ。二人とも変だもん。……私には相談し辛いかもしれないけどさ」
苦笑した後にサオリちゃんが優しく控えめに笑った。
「……私、そんなに解りやすいかな？」
日毎悩んだり落ち込んだりしているのをあんまり表に出してるつもりは無いのに、ここ最近慎太郎にもサオリちゃんにも見抜かれている。苦笑いを浮かべるしかない。
「どうだろ。単純に私がAちゃんの気持ち知ってるから気付いたのかも」
私が素直に白状すればサオリちゃんは少しだけほっとした様な顔をした。
「Aちゃん、他の人の相談にはよくのるけどあんま自分のそういう話しないじゃん」
同じような事を前に慎太郎にも言われた気がする。
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夕色(プロフ) - つばささん» つばささん！ありがとうございますっ。なんとか完結出来ました。でも今だいぶ空気が抜けた風船みたいな状態なので、すぐに次の話を書ける方すごいなーという気持ちでいっぱいです(^_^;)。 (2022年1月24日 19時) (
レス) id: 109b0e65b2 (このIDを非表示/違反報告)
つばさ - ID違うけどつばさです！完結おめでとうございます！キュンとしたり切なかったり…本当に素敵なお話でした(^^)終わりは寂しいですがお疲れ様でした✨ (2022年1月24日 16時) (レス) id: d22c4c2f70 (このIDを非表示/違反報告)
夕色(プロフ) - ★mmiioo★さん» コメントありがとうございます！月曜固定更新にしたのは、自分的に楽だったからですが読んでくれてる方にも楽しみにして頂いたみたいで嬉しいです。二人とも良い子なのできっと良い人に巡り会えるはず！自己満足な裏設定もお読み頂きありがとうございました😊。 (2022年1月24日 14時) (レス) id: 109b0e65b2 (このIDを非表示/違反報告)
★mmiioo★(プロフ) - はじめてコメントします。このお話を見つけてから、毎週月曜日が楽しみでした。ようやく二人が結ばれてほっとしましたか、失恋した2人も近い未来、大切な誰かと出会えますように。皆優しくて、読んでいて心地いいお話でした。裏設定、面白かったです(*´∀`)♪ (2022年1月24日 10時) (レス) id: 9bdd0af86e (このIDを非表示/違反報告)
夕色(プロフ) - ubisiさん» コメありがとうございます！なんとか無事に走り切ることが出来ました。青春ど真ん中の話が書きたかったのでそれを感じて貰えたみたいで良かったです。 (2022年1月24日 10時) (レス) id: 109b0e65b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夕色 | 作成日時：2021年11月22日 8時
