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奔放な少女と予感 翼 ページ21

「……さぁてと。今回も代打は頼んだよ、マイロード」

実況席の椅子をカタリと鳴らして、セラは舞台の方へ向かう。ボクは……いや、別にセラの事を心配している訳では決して無い。決して無いのだが、ちょっと裾のほつれが気になって……そう、単に裾のほつれが気になったのだ。別にセラが万が一にも負けるような事があれば心配で仕方がないとか単純にセラが離れるのが急に寂しく感じてきたとかそんな事は断じてない!ないのだ!
……とまあ、そんな風に言い訳をしつつ、ボクはセラを少し呼び止めた。

「……セラ」
「ん?なんだいご主人様?」
「大丈夫なのか」
「おっやぁ〜?ご主人様は柄にもなく私を心配してくれているのかなぁ?なぁんて可愛らしいコなんだろうねぇ〜〜〜?」
「ちっっっっっっげぇよ!!!ばかっ、ばか!んな訳ないだろ!大体オマエが負けるなんてありえないだろうが!」
「はっは〜ん?そ・れ・は、私の事を信頼してくれている気持ちの表れかなぁ?」
「うっ……はぁ。まぁ……無くは、ない。ってかボクが言いたいのはそうじゃなくてだな!」

セラに反論しようとしていると、セラはするりと抜けて舞台へとスタスタと向かっていく。「おいセラ、ちょっと……」と伸ばした手は空を切り、行き場を失って停滞した。

「まぁ、任せておいてくれ。キミに心配をかけるような事はない。安心してほしい」

セラはボクに背を向けながら、顔を一切見せないまま、今まで聞いた事のない感情がこもった声でう。

「大丈夫だよ。キミが見ていればボク(・・)は最強で居られる。なにしろボク(・・)は、キミに―――」

『―――おい、エインセル!そろそろ舞台に上がれ。今度こそ不戦敗になる奴が出ちまうぞ』

セラが言いかけた言葉は、隠岐奈のアナウンスによって遮られた。「はいはい、そんなに言わなくてもすぐに向かうよ」といつもの明るい声色で返すと、セラはニコリと笑って舞台へ上がる階段に足をかける。

―――セラなら大丈夫だ。わかりきっているだろう。でも、少し様子がおかしい……。

何かが空回っているかのような不安感が、ぞくぞくと視界の端から昇ってくる。―――ああ、こんな些細な事にも気付けないなんてボクは馬鹿だ。セラに関する事だってボクは理解できていない。
セラが言いかけていた言葉がなんだったのかすら、ボクは聞こえなかったのだから。
けれど、小さく動いていた唇は―――

『キミに救われたんだから』

そう言っていたような気がした。

張り詰めた空間 憂梦→←立ち尽くすとはまさにこのこと 斎藤影



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フウ(プロフ) - 続編完成いたしました! (2023年4月4日 10時) (レス) id: fb8260418f (このIDを非表示/違反報告)
フウ(プロフ) - 新章作ります…! (2023年4月4日 8時) (レス) id: b910a0dd1c (このIDを非表示/違反報告)
うp主こと東方好き死神まお(別アカ) - 更新しました! (2023年4月4日 0時) (レス) id: 3fddc0398e (このIDを非表示/違反報告)
うp主こと東方好き死神まお(別アカ) - 更新します! (2023年4月3日 23時) (レス) id: 3fddc0398e (このIDを非表示/違反報告)
雨咲(プロフ) - 更新しました!(可能であれば、幻想入り後の鎬と栞と会って頂きたいです!栞は未登場ですが、幻想郷ですぐに鎬と合流する想定なので栞も忘れずにお願いします!) (2023年4月3日 22時) (レス) id: f4c6e65f12 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:サナティ x他8人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/  
作成日時:2023年2月20日 17時

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