第八話 ページ10
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薄暗く広い部屋。通電遮光されていて外の見えない窓。この横浜で最も侵入が難しい場所のひとつ首領執務室。
その中央に森と向き合うように中原兄妹は立っていた。
中也は両手に手錠をかけられ、両腕を革の拘束具で縛られ、両脚には船舶牽引用大型鎖が巻かれていた。
足首には建築工事に使う鋼鉄ワイヤーが巻かれ床の金具に固定されている。拳は2度と開かないように鋼鉄の枷で覆われていた。
その上、胴体を取り囲むように無数の赤い立方体が出現していた。中也を束縛するための異能亜空間拘束だ。
その異能は中也の横に立つ護衛の異能者によるものだった。だが、それだけの重拘束であっても尚、護衛の異能者は緊張していた。
尚、中也の妹である優羽は中也ほどではないにしろ、手首に手錠をかけられていた。
「どーもお邪魔します……おや」
その時、入口の扉が開いた。顔を出したのは太宰だった。その後ろには佑子もいる。
「やあ太宰兄妹。待っていたよ」
「あれお前、あん時の枯れ木小僧!!手前、あん時はよくも!」
「お、お兄ちゃんどうどう!!」
問題ごとを起こさないで〜〜!!と優羽は心の中で叫ぶ。でもその声は中也には届かなかった。
「はいはい今日も元気だねぇ。僕なんかみての通り大怪我なんだけど。その活力は成長期かな?それとも脳みそと身長にいく栄養が元気さの方にいっちゃってるおかげ?」
太宰は頭に包帯を巻き、右腕はギブスで固定されていた。その隣にいる佑子も頭に包帯を巻いていた。
「兄さん…一々煽らないで。めんどくさい」
「えー。僕コイツにこんな姿にされたんだから恨みの一つや二つや三つぐらいよくない?」
「もう二つぐらいぶつけてるじゃん」
「さて。中原兄妹と話がしたい。蘭堂君、悪いが外して貰えるかな?」
蘭堂は異能を解除すると中也を拘束していた無数の立方体亜空間が消滅した。それから陰鬱な足取りで蘭堂は部屋を出ていく。
「森さん、本題」
「あー……うん。中也君。我々マフィアの傘下に入る気はないかい?」
轟音と共に床が砕けた。
中也を中心にして放射状の亀裂が床を走り抜けたのだ。
あァ?っと地獄の底から声が届いた。中也の声だった。
「そんなクソったれな寝言を吐くために俺を呼んだのか?」
「まあそういう反応になるよねえ。しかし私の見たところ君の追うものと私達の目的はある程度一致している。お互い提供できるものを確かめ合ってからでも返答は遅くないと思うが」
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作者名:十六夜紅葉×山吹 x他2人 | 作者ホームページ:http://yuuha0421
作成日時:2023年6月15日 20時