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第六話 ページ8

「いやあ美しい兄妹愛だね」

なんてにこやかに拍手するは太宰である。もちろん、気持ちなんてこもっていない。その瞳は未だ冷たいままだ。

「僕も君達を見習わないとなあ。ねえ?ユウ」

ざ、っと太宰の後ろから姿を現すは妹の佑子であった。
その目はいつにも増して鋭く、獣じみている。人間の耳ではなく髪色と同じ色の狼の耳を生やし、ふさふさの尻尾を持つ異質だった。

「必要ない」

「相変わらず冷たいなあ、ユウは」

獣の耳と尻尾が消え瞳もいつも通りに戻る。
そんな彼女に太宰は残念そうな顔をした。

「ケモ耳出しっぱでもいいんじゃない?」

「鼓膜破れるから嫌」

「それもそっか」

テンポのいい会話に訝しげにこちらをみる中原兄妹。
意味深な言葉の数々に眉を顰める中也。

「……どういうことだ?」

「あれ?もしかして聞こえないの?」

「あ"?」

「あ・し・お・と」

語尾にハートマークがつきそうなぐらい、一文字ずつ丁寧に言う太宰。

「跫音だと?」

その時、怒声が全方位から叩きつけられた。

「動くな」

銃口が中原兄妹に向けられている。

小銃、拳銃、短機関銃。機関銃に散弾銃。
無数のマフィアと無数の銃火器。

「はは」

中也は周囲を眺めて云った。

「面白ぇ…手前、思ったより人気者じゃねえか。てっきり誰も助けに来ないかと」

「投降せよ、小僧ども」

マフィアの奥から静かな声の広津が現れた。

「その若さで、自分の内臓の色を知りたくはなかろう」

「幾ら凄んでも怖くねえよ、ジイサン。俺に…いや俺達に銃は効かねえ。全員ぶっ倒して帰るだけだ」

「一人で対処できる?お兄ちゃん」

「ああ。手前は引っ込んでろよ、優羽」

「はいはい」

やれやれと首をすくめる優羽に広津は静かな表情で見下ろした。

「懐かしいな……私にもそう言う時期があった。跳ねっ返りで力を盲信し、己の膂力のみで世界をへし折れると信じていた頃が」

そう云って小さく笑った。

「銃が効かないだと?その程度の異能者、大して珍しくもない。さて……警告の時間は終わりだ。次は後悔の時間だ。己の浅慮と無知を血溜まりの中で悔いるがいい」

広津は靴音を大きく響かせて一歩踏み出した。
死神の眼窩より尚冷たい、その目。

「あんたも異能力者か」

中也の目が鋭くなった。

「いいね、その目。これまでのヤツとは歯ごたえが違いそうだ。……来いよ」

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作者名:十六夜紅葉×山吹 x他2人 | 作者ホームページ:http://yuuha0421  
作成日時:2023年6月15日 20時

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