第四十二話 ページ44
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マフィアビルの地下通路を太宰兄妹は歩いている。
長く、白く、殺風景な廊下だ。装飾は蛍光灯と、点在する消化器だけ。敵襲撃時に使用するための緊急避難通路だった。
太宰はひだりあしを怪我し松葉杖をついている。そして太宰の左隣には妹の佑子、右隣には白衣姿の森、それに人形を抱えた小さな児童が並んで歩いていた。
「ーーーという訳で、これが君達の次の仕事だ」
森は云った。
「ふうん。この子供が異能者、ねえ……ねえ君、ちょっと今ここで異能を使ってみてよ」
太宰が傍らを歩く児童に話しかける。児童の外見は五、六歳程度。太宰の呼びかけに何の反応も示さず、ただ人形を抱えてじっと前方を見つめていた。
「云っただろう、この子はまだ自分の意思で異能を使役が出来ない。そのために、具体的にどんな異能かもよく判らないんだ」
森が児童の頭に手を置いて云った。
「知り合いの病院で、同室の子供に怪我をさせる子供の話を聞いて、引き取ったんだ。噂では、この子は指一本動かさずに、相手に重傷負わせるらしい。万一のことがあっては危険だから、異能の効かない太宰君に異能の正体を判別して貰いたい、というわけだよ。そのサポート役として佑子ちゃんをつけるから、いいかな？佑子ちゃん」
「構いません」
太宰は無遠慮き小さな子供をジロジロと見た。
「きゅうさく！」
児童が突然、楽しそうに云った。
「うふふふふ！ぼく、きゅうさく！ねえあそぼう？あそぼうよ？」
「はいはい。大きくなったらね」
太宰はどうでも良さそうに返事をした。
「……見た感じ男の子っぽそうだけど…兄さん、この子の性別どっち？」
「いや僕がわかるわけないじゃん。初対面だよ？ねえ森さん、この子、男の子？女の子？」
「そういえば……聞いてなかったなあ。後で書類を確かめておこう」
ジロジロと佑子が児童を見つめているとあー！！という太宰の叫声が廊下を満たした。佑子が顔を上げると前方に見覚えのある顔が二人と一人、仲良く並んでいた。
大人達と妹達が驚いた顔で二人を見つめる。
「中也！何のために君を組織に入れたと思っているんだ！」
太宰が怒声と共に中也に詰め寄った。
「君は僕の犬だろう！足がかゆいと云われれば足を掻き、そばが食べたいと云われれば蕎麦屋を脅して連れて来、演劇が観たいと云われれば一人で上演してみせるのが君の仕事だ！それを何だ、それも紅葉さんの直麾部隊？出世コォスか、順風満帆か！若いんだから下積みしろこの小型生物！」
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作者名：十六夜紅葉×山吹 x他2人 | 作者ホームページ：http://yuuha0421
作成日時：2023年6月15日 20時
