第四十話 ページ42
そんな二人の前方に影が差した。
小柄な人影が二つ。回り込まれたかと中也は厳しい顔をしたが、違った。
「太宰……それに佑子も……なんで、ここに……」
中也が茫然と呟く。
「仕事」
佑子は簡潔に述べた。いや仕事って…ってポカンとした顔をする二人に太宰は付け足すように云う。
「僕達がマフィアに入るって云ったら、森さんは飛び上がって喜んでねえ。早速いいものをあげようって云って、舞台の指揮権と、ついでに初仕事を押し付けられたんだ」
太宰に従うように、無数の人影が現る。
黒服を纏い、黒い小銃を抱えた、無表情のマフィアの群れ。慈悲の一片も持ち合わせない機械のようなマフィア構成員達だ。
「マフィアに敵対する《羊》と《GSS》が同盟を結んだらしくてね。完全なる。連携を取られる前に叩かなくちゃならないんだってさ。そういう仕事。ま、大して難しくないよ。昼食までには片付く」
「何が……狙いだ」
中也は太宰を見る目が鋭くなる。
「偶然俺と出くわしたなんて、云うんじゃねえぞ。俺を助けて恩を売る気か?」
「恩?助かる?そんな訳ないでしょ。君なんか大っ嫌いだし」
「私達はただ敵を皆殺しにするために来ただけ」
「皆殺し……?」
中也と優羽の顔が凍りついた。
「《羊》のみんなも…?」
太宰は何か云いたげな笑みで、中也を数秒黙って眺めていた。それから口を開き、含みのある口調で云った。
「そうだ。皆殺しが作戦の方針だ。危険な組織だからね。とはいえまあ、もし同僚の誰かが……敵の内情を詳しく知る誰かが、殺さずに相手を弱らす方法を教えてくれる、っていうなら作戦方針を修正してもいい」
「同僚の助言だと……?」
中也が厳しい顔で云った。
「そう。ポートマフィアの同僚。敵の助言は信用出来ないけど仲間の助言なら信用できる。そういうもんでしょ、組織って?」
その言葉に中也は黙った。
太宰が何を言おうとしているのか理解したからだ。
そんな彼を見てこれは決まったなと思った佑子はそのまま優羽に近づき、中也を刺したのは誰?と尋ねた。
「え……っと銀髪の少年っていったらわかるかな?」
「そう」
くるっと踵を返す佑子は準備運動をする。その様子に優羽は恐る恐る尋ねた。
「えっとどうするの?」
「中也君は私の同僚。同僚を傷つけたんだから片腕一本ぐらいなくなっても平気でしょう?」
どうやら佑子は銀髪の少年…もとい白瀬に報復するらしい。目を爛々としてる彼女に中也は顔を引き攣らせた。
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作者名:十六夜紅葉×山吹 x他2人 | 作者ホームページ:http://yuuha0421
作成日時:2023年6月15日 20時