第二十九話 ページ31
はい、あの後ですね、治君が、蘭堂さんに、犯行の動機やら何やらを説明していた時にお兄ちゃんが勝手に乱入しました、まる。そして、治くんが、
「云っておくけど、犯人告発は僕達の方が先だからね。今まさに犯行の説明をしている最中だったんだから」
「はあ?最中ってコトは、まだ終わってねえんだろ?なら俺の勝ちだ。俺はこうして犯人をぶっ倒した。つまり勝利だ。勝った奴が強い。この世の真理だ」
・・・・・・お兄ちゃん。
「君も海の矛盾から蘭堂さんに辿り着いたのかい?」
「海?何の話だ、そりゃ?」
『「気づいてなかったの?」』
あ、ユウさんと被った。
「じゃあ一体どうやって、蘭堂さんが犯人だと見抜いた?」
「んなもん、話を聞けばすぐだろうが。これまでの目撃証言は、先代首領のジイサンを見たって話ばかりだ。だが、そこの旦那は荒覇吐本体を見たと云った。そんな事ありえねえんだよ。だから嘘だと判った」
「では・・・。君は神などというものは存在しないから、私を犯人と考えた、と?」
「はは、違えよ。逆だ。神は実在するからだ」
そうだよ、神は存在する。荒覇吐は、存在するんだよ。“私達”の存在が証拠になる。
「荒覇吐が実在することを・・・知っているのか?」
「ああ。あんた見たんだろ?8年前のあいつを。じゃなきゃあそこまで正確に姿を証言できねえからな」
「ああ・・・。見た。見ただけではない。間近で爆発を受けた。私は瀕死の重傷を負い、生死の境を彷徨った。衝撃と炎のために記憶を失い、横浜の街を流浪した。そこで先代の目にとまり、マフィアへ加入した・・・。・・・中也君、ならば君は知っているのだな。・・・荒覇吐が今、どこにいるのかを。・・・・・・教えてくれ」
よく話すなぁ。
「そりゃ気になるよねえ蘭堂さん」
そうだよね、だって____。
『そうだよね。蘭堂さんはそれを知るためだけに今回の騒動を起こしたんだから。荒覇吐の嘘を見抜けるのは、真の荒覇吐を知る者のみ。荒覇吐を正確に描写したのは、自分自身を巨大な餌として、真相を知るものを釣ろうとしたからでしょ?』
お兄ちゃんは、ため息をこぼして、
「全く・・・・・・。なんであんな奴に会いたがる?あいつには人格や意志そのものが存在しねえんだぞ。あいつは荒神、つまり単純な力の塊なんだ」
と云う。
「人格など問題ではない。意志や思考も問題ではない。その力だけで、私には十分なのだ。教えてくれ、中也君。人智を超えた存在は・・・私を焼いた者は、今どこにいる?」
お兄ちゃんは、少し悩むそぶりを見せた後、
「判った。そこまで知りたきゃ教えてやる。
荒覇吐はな
____俺だよ」
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作者名:十六夜紅葉×山吹 x他2人 | 作者ホームページ:http://yuuha0421
作成日時:2023年6月15日 20時