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第二十八話 ページ30

「マフィアは関係ねえ」

「本当かよ?どうやってそれを証明する?」

「証明は不要だよ」

太宰が間に入った。太宰に続くように佑子も口を開く。

「あなたたちにできるのは中也君を信じることだけ」

「そう、ユウのいう通りだ。それで十分だろ?仲間なんだから。ほら、行った行った」

これ以上要求しても無駄だと悟った三人組は、太宰に促されるように不承不承離れていった。硬い表情の中也を、時折振り返りながら。

「忘れるんじゃないぞ、中也。それに優羽も。昔、どこからともなくふらっと現れた、素性も判らず身寄りもないお前達を受け入れたのが、僕達《羊》だったって事をさ」

銀髪の少年は立ち去り際に中也達に云った。

「だから責任を果たせよ、中也。『手札の責任』って奴を。僕達が云ったんじゃない。お前がいつも云ってる事だ。強い手札を持ってる人間の責任。そいつについてもう一度、しっかり考えた方がいいんじゃないか?」

中也は返事をしなかった。
去って行く《羊》を、ただ黙って見送った。




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「その飾り付けは右の天井近くにお願い。そう、もうちょっと上にね」

とある部屋で太宰と佑子は宴の準備をしていた。

造船所の建物内にある応接室だ。
倒産して所有者が不在となった造船所跡地は非合法組織にとって格好の住処になる。

船を補修するための船渠は今は広い空き地となっており、その両側に立つ三階建ての建物は、静かに滅びゆく運命を受け入れてきた。

その建物の中にある一室に太宰兄妹と蘭堂はいた。
かつては高級絵画と沈み込むような革張りの椅子に置かれたであろう部屋は、今は雨漏りの染みと割れた硝子の破片が彩る廃屋となっていた。

そして太宰は、どんな改造をしても誰も文句をつけてこないこの部屋を彼の望みの部屋に変える真っ最中だった。

「はあ、楽しみだなあ。中也君が自由を得た記念にこんな盛大なパーティを催して貰ったと知ったら、彼はどれぐらい喜ぶだろうか」

太宰は上機嫌に鼻歌を歌いながら、壁に飾り布を留めている。右手はギブスで固められている状態だが、左手だけで色とりどりの、装飾を次々飾り付けていく。

「たくさん喜ぶと思う」

太宰の手伝いをしていた佑子は云った。
その表情は相変わらず無表情であったが、雰囲気はいつにも増して明るく嬉しそうだった。

「そうだといいな。おお、この飾り布、ながーい。奮発して用意しただけあるなあ。部屋の壁を全部飾りで埋め尽くせそうだ」

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作者名:十六夜紅葉×山吹 x他2人 | 作者ホームページ:http://yuuha0421  
作成日時:2023年6月15日 20時

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