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「灰原雄です!」
「七海健人です」
『秤ひよりです』
第一印象は何処にでもいそうな女子高生。
事情があって入学が遅れたと言う割に、あまりにも普通で疑問を抱いたがこれでも準一級。
(見た目の印象はアテにならないからな…)
七海が考え込んでいる内に、灰原が話しかけている。初対面でも割と話せているが、灰原の性分が大きいだろう。
「ところで今日の任務内容は知ってる?」
『はい。土地神案件の一〜特級任務だとか。灰原君と七海さんは何級ですか?』
「とっきゅう…??」
特級案件?馬鹿な、報告書には二級とある。単純なミスか、或いは上層部の…
「灰原、一旦戻りましょう」
「え!?や、ちょっと見てからでも、」
轟音。
爆発音の直後、土煙が巻き上がる。それに対応するように秤が取り出したのは団扇。
『吹き飛べ…!』
凄まじい腕力を以て団扇を振るうと、暴風が巻き起こり土煙を散らす。その向こうには巨大な影。何かを構えて、
「灰原!躱せ!」
放たれた鎌鼬は灰原の体を横なぎに切裂かんと襲いかかる。七海の身体能力では届かない。
『…ぅえ、げほっ』
硬質な物で弾かれたような音を出して鎌鼬が消え去り、灰原の前には腹を抑えながら膝を着く秤の姿。
「秤ちゃん!」
高専への連絡は済ませた。後は自分が足止めをすれば二人は助かる。
「灰原、すぐに離れて下さい」
-拡張術式 十割呪法 瓦落瓦落
山肌に一撃を叩き込み、土地神の上に落石を起こす。
「七海、危ない!」
気付けば眼前に触手が迫っている。
ここで自分は死ぬのか。だが灰原と秤は逃げ切れる。後悔はしない。
『諦めるなよ、っ!』
「秤さん…?」
いつの間にか戻って来た秤が七海を抱えて攻撃を躱す。ぎり、と噛み締められた歯の音が聞こえた。彼女は負傷している。これ以上動かす訳には…
「術式順転・蒼」
土地神が上空に引き寄せられると同時に、秤の足が止まった。山の上に立つのは、五条悟。
「俺の後輩に、何しようとしてんだよ」
苦鳴を上げる間もなく潰された土地神に目を取られ、隣で秤が倒れた事に気づけなかった。
「秤、俺が来たからさ。寝てて良いぞ」
近寄って来た五条先輩が秤を抱き抱え、車に向かう。合流した灰原が秤を見てホッと息を付くが、厳しい顔をしている。
結局高専に戻るまで、二人は話せなかった。
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作者名:くろ | 作成日時:2020年11月5日 22時