検索窓
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:323 hit

1 ページ4

ぱちり、と目を開ける。青い空。そして緑の葉。あと左手に感触。現実味の感じられない光景をしばらくぼぅっと見る。
声は出せるのだろうか。なんて考え、
「「あー…っ!」」
横に人がいたことに気が付いた。ふっと左手から何かが離れる。若干涼しく感じる辺り、手でも握っていたのだろうか。
 ちらと横を見る。その時の感情は言葉では表しにくい。取り敢えず吃驚した、とだけ言っておく。青白い肌に真っ黒でぼさぼさの髪。そして縦に割れた紅い瞳孔。
通常現実ではまず見掛けない容姿だが、瞬斗には見覚えがあった。姉のアバターである。種族は確か吸血鬼だった筈だ。…日の光を浴びても平気で居る辺り違っていたかも知れないが。
「瞬斗…?」
話しかけて来た。俺の名前を知っているという事は、まさか
「姉さん?」
「やっぱり、瞬斗なの?」
やっぱり?いや待て。あの見た目で姉を名乗るならば俺もゲームのアバターの見た目なのか?
「姉さん。俺はどんな感じ?」
一瞬、質問の意味が分からなかったようだ。一度、二度と瞬きをしてようやく口を開いた。
「ゲームの通り。もふもふしてそうな狐耳に、ずる賢そうな顔をしてる」
流石姉さん、簡潔な答えだ。だがそうなると俺も姉さんもゲームのアバターそのままに現実にいる事になる。流行は過ぎたが確か異世界転生などと言うのだったか。けれどそれ系となると心当たりが無い。撥ねられたことなんて一度も無い。
「まさか、アレで…」
「どうかした?何か心当たりでも?」
「ある事は、ある」
どうやら俺が忘れているだけらしい。だがそれにしても顔色が悪い。日の光を浴び過ぎているのだろうか。というかこの体はゲームの能力を持っているのか。今まで気にもしなかったがここは森の中。野生の動物がいるかも知れない。
「姉さん。取り敢えずこのままここにいるのは危険だ。能力が有るかも分からないし」
「…遅かったみたい。お出迎えだよ」
何の音も無く姿を現したのは巨大な熊。四足の時点で大型車並みである。爪は鋭く、見開かれた目は姉をじっと見ている。
「…くそ。やれるかは分からないけど」
「!瞬斗、それ」
慣れ親しんだゲームのように構えた途端に表れた2本の剣。間違いない。
愛剣、『地竜の牙』と『鎌鼬・伍式』だ。
これならば、と剣を握り締め姉を背中に庇う。
生き残れるかは俺に掛かっている。
一体どこまでゲーム通りか分からないが、伍式が有るならば最悪逃げられる。
「さあ、やってやるよ」

2→←登場人物 2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 0.0/10 (0 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:くろ | 作成日時:2020年7月26日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。