遅すぎた恋 (ページ9)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:10,180 hit

9 ページ9

それからたわいない会話をしながら

どこへ行くわけでもなく

ただ、歩いた。

久しぶりのAとの時間。

沈黙が嫌で、その時間さえ無駄にしたくなくて

少しでも長くAの声が聞きたくて

だけど恥ずかしくて

急にお喋りになった俺に

そっけない返事をしながら

目を合わせる事もなく

微妙な距離を保ちながら

歩くA。

ちゃんと答えてくれるだけで嬉しかった。

それと同時にAに謝るタイミングをなかなか切り出せずにいた。

随分、歩いた。

まわりの景色は騒がしい背景とは変わり

駅の近くの静かな公園まで来ていた。

人や葉がゆっくりと流れて

周りは段々と暗くなってきた。

その時、ずっと返事しかしてなかったAが

やっと口を開いた。

A「ねぇ…。あの…女の子とは上手くいってる？」

Aがやっと俺の目をみて話した。

EH「…うん。いってるよ…」

嘘をついた…

A「そっか…^^良かった」

ふわっと笑うとまたAは目をそらした

本当の事を言えば良かった…

もう、遊びはやめたんだって。

だけど、言えなかった。

Aを傷つけるだけ傷つけて

今更公正したなんて…

少しでもカッコよく見せたいって

見栄もあった…

沈黙が続いた。

そしたらAが

A「ヒョク？私…もう…」

タイムアウトを告げた。

EH「あ…うん…」

ニコッと微笑み軽い会釈をすると

Aは俺に背を向き歩き出した。

その後ろ姿を見たら

今までの事が走馬灯のように

俺の頭を駆け巡った。

出会った時の笑顔や傷つけた時の涙

そして、最後のAの顔…

段々遠ざかるAの背に

EH「A‼ゴメン‼」

俺は叫んだ。

Aに届くように。

EH「Aの事、傷つける事しか出来なくてゴメン‼」

俺は泣いていた…

伝わったかもわからない。

また、傷つけたかもしれない。

時間はあったのに

やっと会えたのに

俺はその場にしゃがみ込んだ。

すると

ジャッーと足音が聞こえた

次の瞬間

ふわっと俺の好きな香りがした

ゆっくりと項垂れた頭を上げると

そこにはAがいた。