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44.火事場の底力 YG side ページ44

※YG side




タクシーに乗り込み飛ばすだけ飛ばしてもらって、
それ以外は夢中でひたすら走った。


俺、こんなに走れんだなってくらい走ったと思う。


「御家族以外うんたらかんたら。」と止められたので、
「弟です。」とか適当な事言ってICUから出たばかりのAヌナの病室の前にいたんだ。



頭を包帯でグルグル巻にされてて、
何本もの管が身体から出てるヌナを見て、
あまりのショックに頭から血の気が引いていった。


身体が冷たくなる感覚だった。



医師「処置は済んでいます。一時意識はありませんでしたが、今は麻酔で眠っているだけで、命に別状はありません。ただ頭を打っているのでこのまま入院して引き続き検査はしてもらう事になります。」


YG「大丈夫なんですよね?」


医師「MRI、CTともに今の所異常はありません。脳震盪で意識が朦朧とされたようです。幸い軽い怪我で、頭も数針しか縫っていません。」


YG「そうですか……ありがとうございました。」


看護師「あと数十分で麻酔から覚めると思います。目が覚めた時に御家族様がいらっしゃるととても安心されますので、どうかそばにいてあげてください。」


YG「はい。」



もうヌナは死んでしまうのかと思って、
なりふり構わず走ってきた緊張が少しほどける。



YG「良かった……」



それでも目を開けないAヌナを見てるのは気が気じゃなかった。


このまま目を覚まさなかったら?

目が覚めたら記憶喪失の落ちとかなしだぞ?

異常なかったのに急変とかまじ勘弁だからな?



神に祈るように跪いてヌナの手を両手で握る。




YG「早く起きろよ。安心させてくれ。」




のちのち黒歴史になっても構わない。

怪我をしたヌナの報せを聞いて、
なりふり構わず駆けつけた馬鹿な俺だと言われても良い。




今は全てを投げ出してでも駆けつけたかったんだ。


死んじゃうかもしれないと、
もう二度と会えないかもしれないと、
行かなくちゃいけないと、


そう本気で思ったんだから。



目を覚ましたら俺の名を呼んで、
いつもの笑顔で「大丈夫ですよ。」と言って欲しいだけなんだ。







______________________________

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作者名:kee x他1人 | 作成日時:2018年9月16日 23時

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